安倍首相の記者会見では内閣広報官が質問者を指名する。だが「打ち合わせ」をしていない質問者は原則として指されない。フリー記者の畠山理仁氏は、第2次安倍政権の発足以後、会見で手を挙げつづけたが、指されるまで7年3カ月かかった。畠山氏は「コロナ禍で会見が変わり、ようやく私も指されたが、このままでいいのだろうか」という——。
司会進行を務める内閣広報官から指名され安倍首相に質問する筆者。7年3カ月を経て初めて質問する機会を得た。

撮影=小川裕夫
司会進行を務める内閣広報官から指名され安倍首相に質問する筆者。7年3カ月を経て初めて質問する機会を得た。

なぜか窓口はすべて「官邸報道室」

首相官邸における首相会見を考える上で、もうひとつ重大な指摘をする。前編でも述べたように、首相会見の主催者は内閣記者会である。しかし、事前登録者リストへの登録申請はもちろん、毎回の会見への参加申込も、窓口はすべて「官邸報道室」になっている。

内閣記者会は会見の主催者でありながら、姿を見せない。記者会見に誰が参加するか、誰が質問するかも、すべて官邸報道室にお任せになっている。これでは「権力側と共犯関係にある」と言われても無理はない。

現在、首相会見の司会進行を担当しているのは長谷川榮一内閣広報官だ。質問は「一問一答」だから、首相が曖昧な答えをしても「更問(さらとい・追加質問)」ができない。だから首相の「言いっぱなし」を許すことになる。これでは記者会見ではなく、単なる記者発表だ。内閣記者会は主催者でありながら、それを許したままである。

インターネット上で、「記者クラブは厳しい質問をしない」という評価を目にすることも少なくない。しかし、私は現場にいる者として、この点は明確に否定しておきたい。

内閣記者会の記者も、厳しい質問をしている。しかし、それでも十分な答えを引き出せているとは言えない。それは、内閣記者会が主催者でありながら、官邸側が主張する「一問一答ルール」を認めてしまっているからだ。