「ネットニュース編集者」で検索すると、中川淳一郎さんの名前が真っ先に出てくる。そんな中川さんは「2020年8月31日をもって、ネットニュース編集の一線から退き、半ば隠居する」と宣言している。14年以上もネットニュースの第一線に立ち続けてきた中川さんが、いま考えていることとは──。

老人はリモートワークに対応できるのか

47歳、社会人24年目。そろそろ「撤退戦」を考えるようになった。

何が「生涯現役」だ。何が「75歳定年が当たり前の社会になる」だ。何が「勤労意欲のある人が100歳まで安心して働ける仕組みをつくる」だ。勘弁してほしい。

ここに、某企業に勤める74歳の山田さん(仮名)がいたとしよう。新型コロナの影響でいきなりリモートワークが導入され、「当面、会議はすべてZoomを用いたオンライン形式で実施すべし」と会社から指定されてしまった。会議の準備を取り仕切る若手社員からのメールには「参加案内のメールを会議開始10分前に送りますので、山田さんもミーティングルームに入ってください。できればマイク付きイヤホンを使うほうがいいですね。資料は各自、画面共有機能でメンバーに公開してもらうので、事前の作成をお願いします」などと、簡単な説明が書いてあるのみ。

いや、ちょっと待ってほしい。これまでまったく触れたことがないITツールを唐突に押し付けられても、山田さんは言うとおりに使いこなせるかっつーの! スマホは必要最低限の機能しか使わない、パソコンもサイト閲覧と特定のアプリで定形書類を作成する程度しかできない、なんて老人はごまんと存在するのだ。山田さんは半泣き状態で「ワシ、やり方わからんのですよ。設定したいから家に来てもらえませんかのぉ~?」なんて、若手社員に請うしかない。仕方なくその要望に応えてレクチャーに出向いたところ、まさかの感染……なんて事態に陥ったら、それこそ本末転倒である。

「老い」と「衰え」はセット。だから「引き際」が存在する

手仕事系の職人や農作業といった家業の手伝いなどはさておき、大半の人にとって「生涯現役」「75歳まで働く」は正直、キツくないだろうか? 人間の社会には本来、ある程度の年齢になったら労働の現場から退き、経済活動の土俵から下りるという「引退」「撤退」「引き際」という節目が存在していた。「年寄りの冷や水」「老害」「若づくり」といった言葉が昔からあるように、もともと「老い」というものは「衰え」とセットであることを、先人も理解していたのである。

これは別に老人差別というわけではない。誰もが老人になるし、一線級のプレイヤーとして活躍できなくなる。それが道理なのだ。私はただ、「無理して頑張るな」と言いたいだけである。