世界中で感染症が流行するのは、どんなタイミングなのか。世界史講師の斎藤整氏は「14世紀に西欧と中国で同時にペストが大流行したのは、ユーラシア大陸の開拓が進んだためだった。経済的発展と感染症の流行は、表裏一体の仕組みになっている」と解説する――。

※本稿は、斎藤整『ヨコで読む大人の世界史』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ウィーン、オーストリア国立図書館

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モンゴル軍がペストをヨーロッパに持ち込んだ?

1300年頃までのヨーロッパは「大開墾時代」と呼ばれていました。当時の気候温暖化は農業生産の向上を招き、やがて大幅な人口増加につながりました。しかし、人口の増加を喜んでばかりはいられませんでした。人は増えても土地は増えないからです。結果、新しい土地を求め、森の木が次々と切られていきました。鬱蒼うっそうとした森林はやがて、人間が耕す畑、住居、村へと変わっていったわけです。

そして、当時のヨーロッパにおいて未開の地であった東欧へと人々の移住が進みます。この集団移住は「東方植民」と呼ばれていました。13世紀にアジアのモンゴルがヨーロッパへと侵入したのは、まさにその頃、大開墾時代のこと。東欧の森林は開墾によって消えつつあり、モンゴルの騎馬軍団にとっては通過しやすかったのでしょう。