スイスのブロックチェーン・スタートアップ支援策が却下
地元紙Tages-Anzeigerの24日の報道によると、ブロックチェーン新興企業へのコロナ支援措置として提案されていた、1億スイスフラン(110億円相当)の官民ファンド案が却下されていたことがわかった。
チューリッヒの南に位置するツーク州を中心とした「クリプトバレー」には、800社以上の仮想通貨及びブロックチェーン新興企業が集まる。 ツーク州の財務局長で、スイス・ブロックチェーン連盟(SBF)の会長も務めるHeinz Tännler氏は、ツーク州からの拠出金と民間投資およびスイス連邦政府からの保証によって構成されるベンチャーファンドを設立することで、コロナ危機に苦しむこれらの新興企業を支援しようと、政府との協議を重ねていた。
スタートアップを取り巻く厳しい状況
情報筋によると、ツーク州議会は先週、コロナ危機関連の20数件に及ぶ財政支援申請を検討したが、そのほぼ全てが承認される中、ブロックチェーンスタートアップ向けの申請のみが却下されたという。
スイス政府は先月、新興企業向けの緊急援助として1億5400万フラン(約170億円)の信用保証を提供すると表明していたが、苦境に陥ったスタートアップの救済には十分ではないとTännler氏は述べている。さらに、政府の融資枠では企業の売上に基づき審査されるため、収入を生み出すに至っていないスタートアップには不利な状況で、申請しても受給できないケースが70%近くに上っているとのことだ。
SBFの調査によると、回答を寄せた203社のうち、8割近くのブロックチェーン・スタートアップが年内にも倒産する可能性が高いという認識を持っており、危機的な状況だと言えるだろう。
新たな支援策
しかし、全く希望がないわけではない。
ツーク州は25日、コロナ禍で打撃を受けた「持続可能なスタートアップ企業」に対し、連邦政府と共同で、総額1500万スイスフラン(16億6000万円相当)の支援を行うと発表した。ツーク州が最大500万フラン、連邦政府が1000万フランを負担する。
スタートアップは任意の銀行へ融資を申請することが可能となる。この融資は、他のコロナ支援プログラムと同様の内容(保証協会の直接保証:連邦政府65%、ツーク州35%の間接保証)で、今月27日から8月31日までの期間に、連邦政府のプラットフォームより申し込むことができるという。
ただし、数あるスタートアップから「明日の勝者を選ぶのは非常に難しい」ため、融資を受けるスタートアップ企業の選定には、外部の専門家の意見を取り入れた審査が行われるという。
スタートアップの成功率
コロナウィルスパンデミックが、クリプトバレーのブロックチェーン・スタートアップに大きな打撃を与えたことは確かだが、クリプトバレーが「死の谷=Death Valley」となると決めるのはまだ時期尚早だと、スイスのマーケティング会社Relevance Houseの共同設立者German Ramirez氏は言う。
同氏は業界を問わず、80%のスタートアップが失敗することは通常のことで、起業というゲームの一部であり、特にコロナウィルスとは関係ないと指摘。 しかし、パンデミック収束後には、ブロックチェーンのような革新的技術によるデジタルソリューションが求められ、新たな機会が創出されるとその先を見据えている。
確かに今後数ヶ月は厳しい「自然淘汰」に見舞われる企業も多いだろう。しかし、クリプトバレー協会のDaniel Haudenschild会長は、この業界は打たれ強いメンタルを備え、立ち直る力を持っていると次のように述べている。
「この業界の人々は、自分たちがやっていることを心から信じている。一つのプロジェクトが失敗しても、またすぐに別のプロジェクトを立ち上げる。エコシステムからの大量撤退はないだろう。」
逆境を生き抜いたスタートアップこそが、次世代を担う真の有力企業に成長を遂げるのかもしれない。
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