ビットコイン採掘レートの続落
仮想通貨(暗号資産)で最もネットワーク規模が大きいビットコインの採掘ハッシュレートが、直近1年間で最も低い水準に達している。
政府のマイニング取り締まり強化を受け、実質的なマイニング活動が絶たれる状況にある中国の影響が主な要因だ。最高値の140 EH/sから一時88 EH/sまで達し、減少幅はグローバルハッシュレート値の5割と分析されていたハッシュレート値に近い水準となった。
ハッシュレート
日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
影響が出ているのがビットコインのブロック生成で、1日に144ブロック生成されるブロック生成状況が一時約半数に遅延する79ブロックの遅延も確認された。1日のブロックの生成の遅延データとしては、今回が初めての事例となるという。
ビットコインネットワークはこのようなマイナーの撤退による影響などの影響を受けた状況の正常化を行う仕組みとして、難易度調整が約2週間に1回実施される。2週間の基準は正常時の1ブロック=10分から難易度調整タイミングとして規定された2016ブロックを掛け合わせた値。今回は約5日後の7月3日前後に予定されているが、ブロックの生成が遅れるほど、後ろ倒しになる可能性が高まる。
警戒される死のスパイラルはない?
マイニングハッシュレートの低下とビットコイン価格の下落が連鎖する「デススパイラス」が起きた18年末の状況と今回の事例を重ねる見方もあるが、根本的に背景が異なるハッシュレートの下落である点に注意したい。
18年末の当時、17年バブルのビットコイン価格高騰に伴い、中小規模の新規マイニング事業者が市場に大きく流入し、その後の価格の下落と低迷相場を受け、採算が取れなくなったことで事業の撤退が相次いだ。
デススパイラルと言われた理由は、ビットコイン価格の下落で損益分岐点を割るマイナーが続出し、撤退。採掘等で溜め込んでいたビットコインの売却とポジションの整理などに繋がり、さらに価格が下落する負の連鎖が続いたことにある。
一方で今回の例を見ると、主な理由は中国というカントリーリスクに起因したもので、根本的なマイナーの撤退とは異なる。中国では世界的なマイニング産業が存在した地域であり、国外移転も視野に事業を継続する動きも多く報告される。
ビットコインの価格自体も最高値約700万円から半値水準まで下落したものの、2021年の年初と同水準と警戒される価格とまでは至っていない可能性が高い。
今後は?
この点を踏まえても、今後の警戒すべきポイントは、採算ラインに関わるビットコイン価格の続落だ。
ネットワーク自体は、1週間前後で調整される難易度調整を経て正常化されると、中国マイナーを除く既存のマイナーにとっては収益が大幅増となる可能性が高く、より魅力的なネットワークになり、再び復調傾向に移行することが予想される。
中国政府の取り締まりの影響を受けたマイナーの移転も動き出しており、アメリカやカナダなどのカントリーリスクや電力代等で優位にある地域がより現実的な候補地に挙がっている。マイアミ市長のフランシス・スアレス氏は6月初め、中国系マイナーの受け入れを歓迎する意向も示している。
今回の事例にコメントしたビットコイン大口保有の上場企業で知られるMicroStrategyのMichael Saylor CEOはBloomberg Technologyで、「中国のビットコインハッシュレートシェアを50%で、年間平均100%の成長率かつ100億ドルを生み出す産業を有していた」とコメントし、その判断の将来的な影響を指摘している。
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