米議員、過度な仮想通貨規制に反対
米共和党のPat Toomey上院議員は10日、ジャネット・イエレン財務長官などにFinCENやFATFが進める暗号資産(仮想通貨)取引を規制するルールや法案に反対する書簡を提出した。
米ドル取引を規制する既存のルールより厳しい基準をフィンテック領域に課すべきではないとして、イノベーションと個人の自由を促進する規制方針を呼びかけた。
ペンシルベニア州出身で共和党所属のToomey議員は上院議会の銀行・住宅・都市問題委員会に所属する就任10年目の政治家。同委員会が9日行なった公聴会では、民主党のウォーレン議員が仮想通貨に批判的な姿勢を示している。一方、共和党には、ビットコイン・カンファレンスに登壇するなど、仮想通貨に友好的なCynthia Lummis議員なども在籍する。
今回の書簡は、昨年12月に前財務長官が発表した自己ホスト型の仮想通貨ウォレットに関する規制案や、FATFのトラベル・ルールに反論するもの。米財務省のジャネット・イエレン財務長官に宛てられた。
トランプ政権の退任が目前だった20年12月、当時のMnuchin元財務長官は自己ホスト型の仮想通貨ウォレットの取引を制限する法案を正式に発表。法案では、3,000ドル(30万円)を超える引き出しに対してKYC(本人確認業務)の強化が求められるほか、引き出しを行う顧客と、送金先の身元情報(名前や住所など)の開示が求められる。
また、1万ドル(約110万円)を超える取引には、FinCEN(金融犯罪捜査網)への報告が義務付けられる。
国際的規制機関であるFATF(金融活動作業部会)はトラベル・ルールを策定しており、各国の規制作りの基準となっている。
トラベル・ルールとは
資金洗浄等防止のため国際的な電信送金に関するルールで、仮想通貨取引所などのサービス・プロバイダー(VASP)には取引の際、送金者と受取人の情報を収集・交換し、その情報の正確性を保証することも求められる。
対象となるVASP間の仮想通貨送金で、国際的なKYCルールが適用されることになる。
FinCENの規制に反対
Toomey議員はフィンテックが金融包摂や個人のプライバシー向上などにつながると述べ、規制当局はイノベーションを妨げない規制を定める必要があると指摘。その中でも仮想通貨はフィンテックの台頭において重要な役割を担う存在だとし、消費者のプライバシー保護や金融包摂などの利点があると高く評価した。
しかし、FinCENの法案が実現すれば、既存の米ドルを利用した取引以上に厳しい基準を仮想通貨取引に迫ることとなると説明。従来の米ドルを用いた取引とは違い、提供されていない、または取得しにくい情報の開示が要求されることになると指摘したほか、金融機関の消費者ではない人物の個人情報の開示はプライバシーの面で大きな疑問が残ると述べた。
さらに、過度な規制は寧ろ犯罪の抑制するどころか、金融機関を介さない手段での犯罪を後押しすることになりかねないと警鐘を鳴らした。
FATFの基準も批判
また、FATF(金融活動作業部会)の定める基準についても、FinCENのルール同様、仮想通貨取引に負担の大きい要件を課していると指摘。FATFは自己ホスト型のウォレットの規制ではなく、取引や規制を必要とする団体の取り締まりに注力すべきだと述べた。
その上で、Toomey議員は仮想通貨の規制は、この革新的な技術が多くの人々の人生を変えるポテンシャルを持っている前提でアプローチする必要があると主張。「仮想通貨や今後のイノベーションを妨げるような規制体制ではなく、比較的軽い規制に取り組むべき」と呼びかけた。
FinCENの自己ホスト型ウォレットに係る法案は、バイデン大統領が就任後、一時的に保留となった方針が発表されていた。 新政権へ移行する際の通常プロセスであるものの、あくまで一時的な保留であることから今後検討が再開される場合もあり得る。
また、バイデン政権は5月末、仮想通貨の取引に関する報告義務に関する提案を発表。内国歳入庁(IRS)らに対する仲介業者の報告義務の拡充、並びに600ドル(約60万円)以上の仮想通貨送金に関して、金融機関に対し顧客の情報提供を求める内容で、仮想通貨を利用した脱税を問題視する姿勢を示していた。
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