価格変動損失リスクの少ないオラクル基盤のDEX、CoFiXとは──NESTがアップデートを発表

Blockchain
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CoFiXがアップデート

イーサリアム上で分散型オラクル開発に取り組むプロジェクト「NEST」は、自身のオラクルを活用したAMM(Automated Market Maker、自動マーケットメイカー)、「CoFiX」のアップデートを実施。このアップデートは主に、リスクヘッジ・プロセスの簡易化や、リスク算出に使用されるアルゴリズムの最適化を目的としている。

NESTのオラクル技術は、仮想通貨Chainlink(LINK)などとは異なる価格取得モデルを基盤に構築されており、アービトラージ取引の特性を活かした分散的な手法で、イーサリアムエコシステム外の価格情報をチェーンに持ち込んでいる。

CoFiXは既存のAMMとは異なる新たなモデルを提供しており、価格変動損失のリスクが少ないなどのメリットがある。これまでにCoinbase VenturesやDragonfly Capital Partners、Huobi Capitalなど、著名投資企業から投資を受けている。

既存AMMのリスク

Uniswapを初めとした一般的なAMM形式のDEX(分散型取引所)では、ブロックチェーン外の価格を反映することが不可能なため、公式を用いることによりトレード価格を設定している。採用されている公式はDEXによって異なるが、基本的には、あるプールに預けられたトークンペアの需給のバランスにより、価格が決定される(Uniswapの場合はx*y=k、kは定数)。

言い換えれば、AMMにおけるトレード価格に影響を与えるのは、プール内にあるトークンの需給バランスのみであり、各トークンの外部の市場価格がどれだけ変動しようと、その価格はAMMでは考慮されていない。

トレーダーのリスク

このモデルでは、多少でもプールに流動性(トークン)が預けられている限り、レートが悪かったとしてもトレードが成立するという利点がある一方、市場価格が反映されないことにより、オーダーブック型の取引所と比較すると、トレーダーにとって損となることもある。

例えば外部の市場では、1ETH=1,000USDTでトレードが成立していたとする。この時、AMMのプール内でETHの需要が高ければ、1ETHを1,000USDT以上の価値でトレードできるため、トレーダーにとっては市場価格で取引するよりも利益が増えることになる。しかし反対にUSDTの需要が高い場合、1,000USDT未満の価値でしか1ETHを売れず、オーダーブック型取引などと比較して損が生じる。

流動性提供者のリスク

一方で流動性提供者も、価格変動損失という、AMM特有のリスクに晒されることになる。

英語ではImpermanent Loss(IL、直訳すると未確定損失)と呼ばれている価格変動損失とは、AMMへ資産を預け入れている(流動性を提供している)間に、価格が変動することにより生じる損失を指している。この損失が生じると、提供した資産を回収する際に受け取ることができる価値と、仮に流動性提供をせずに自身の手元にその資産を置いたままにした場合に保有しているであろう価値を比較した際に、前者の方が少なくなってしまう。つまり、利益を求めて流動性を提供したにもかかわらず、結果として流動性を提供しない方が得であったという状況に陥る。

価格変動損失は、上述のように、既存のAMMモデルでは市場価格に関係なく需給でトレード価格が決定していること、およびそれにより流動性提供の際には、二つのトークンをペアにして預け入れる必要があることに起因している。

価格変動損失の詳細は、「初心者でもわかるUniswap完全ガイド|Kyber network寄稿」に詳しく解説されている。

例えば、AさんがUniswap v2に、1ETH=1,000USDTでETHおよびUSDTの流動性を提供すると仮定する。提供した資産を回収する際は、預けたトークンが全く同量で戻ってくるのではなく、「現在のプールの総価値に対して、どのトークンをどの割合で預け入れたか」に基づいて、回収できる資産の量が決定する。

Aさんの流動性提供の後、何らかの理由でプール内のETHの需要が急拡大したとする。そうすると流動性提供時と比較してプール内のETH量が減少し、反対にUSDTが増加することになる。このタイミングで提供した流動性を回収しようと試みると、プール全体の需給のバランスがAさんの流動性提供時とは異なっている、つまりETHが減少しUSDTが増えているため、1ETHよりも少ない量のETHおよび1,000USDTよりも多い量のUSDTが返ってくることになる。

この場合、ETHの市場価格によっては、流動性提供せずにウォレットなどに保管していた方が、ETHおよびUSDTの総価値が高くなることもありうる。

オラクル基盤の市場価格に基づいたAMM

上記のトレーダーおよび流動性提供者のリスクは、市場価格を反映できないというAMMの設計に付随したリスクである。裏を返せば、市場価格を反映する方法があれば、需給に基づいた公式がなくてもトレードが可能になるため、このようなリスクは軽減される。

CoFiXでは、NEST開発の分散型オラクルを統合することにより、市場価格でのトレードを可能にしている。Bancorのv2やDODOに類似した仕組みだ。このようなオラクル統合型のAMMでは、21年5月にローンチが話題となったUniswap v3とは全く異なる観点から、変動損失のリスク軽減に取り組んでいる。

具体的には、CoFiXで流動性提供する場合、流動性提供者はUniswapなどと同様にあるプールにトークンを預け入れる。ここまでは一般的なAMMと同様だが、実際にそのプール内でトレードが行われた際は、トレード価格はx*y=kのような公式に沿ってではなく、オラクルから提供される市場価格を基に決定される。そのため、前述のように市場価格とのズレから生じるトレーダーの損や、流動性提供者の価格変動損失が、既存のAMMの規模では起こり得ない。

また、オラクルから市場価格を取得することにより、ボラティリティを初めとしたリスクの数値化が容易になるため、多くのAMMのような固定手数料(Uniswap v2では一律で0.3%)ではなく、流動性提供者が負いうるリスクの大きさに応じた手数料を、ユーザーに課すことができる。つまり、オラクルでより正確にリスクを計測することにより、そのリスクに見合った報酬を流動性提供者へ与えられるようになる。

NESTは、このような全てのパラメータが数値化可能な金融サービス群を「Computable Finance(計算可能な金融)」と呼び、CoFiXの名前の由来にもしている。

v2へのアップデート

CoFiXは、5月にv2へのアップデートを発表。複数の変更がプロトコルに加えられたが、最も特筆すべきアップデートは、リスクヘッジ方法の変更だ。

一般的な価格変動損失のリスクが軽減されたとはいえ、プール内の需給のバランスが崩れた場合には、CoFiXの流動性提供においても、引き出せる資産の総価値が下がる可能性は拭いきれない。v1では、流動性提供者が、CoFiX以外の取引所でアービトラージ取引を手動で実行することにより、このリスクを回避するしかなかった。

しかしv2では、このプロセスが自動化された。あるトレードによりプール内のトークン比率が崩れた場合、元の比率に戻すことを目的に、比率を崩したトレードとは逆のトレードを行うようなインセンティブがトレーダーへ付与される。このインセンティブも、オラクル価格を基に数値化されており、リスクが大きければ大きいほど、インセンティブも大きく設計されている。これにより、トレーダーのリスクを正確にカバーできるようになる。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

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