ビットコイン高騰で関心高まるオプション市場、高度なトレード戦略をプロが解説

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ビットコイン市場のオプション考察

暗号資産(仮想通貨)市場で、ビットコイン(BTC)にも昨年から機関投資家参入の動きが継続しています。

また、取引量や価格の大きな上昇も相まって、世界的にビットコインという投資対象に注目が集まるようになりました。

機関投資家が中・長期的に現物を保有する動きも出ている中、オプション市場の取引量も増加してきており、現物の価格形成に影響を与えるようになってきています。

ここでは、機関投資家がオプション市場でどのような取引を行っているのか初心者でもわかりやすいよう簡単に解説していきたいと思います。

ビットコインオプション市場の基礎

オプション取引とはどのような取引なのかわからない方も少なくないと思われるので、基礎知識について最初に触れていきます。

オプション取引とは「権利の売買を行う取引」です。

教科書的な説明を行うと、

①ある商品(原資産)を

②定められた満期日(期日)に

③定められた権利行使価格で

④買うことや売ることができる権利

となります。(上記はヨーロピアンオプションと呼ばれるもので示しています。)

ビットコインであれば「1月29日にビットコインを40,000ドルで買う権利を買う」というような取引を意味しています。この買う権利を買うためにはプレミアム(オプションの権利を買うための手数料)を支払う必要があります。

上記の権利を購入した場合投資家は、2つの選択肢を持っていることになります。

1.権利を行使して1月29日に40,000ドルでビットコインを購入する

2.権利を放棄する

の2択となります。

1.の「権利を行使して1月29日に40,000ドルでビットコインを購入する」を選択する条件としては、1月29日のビットコインが40,000ドル以上となっている(権利を行使した後に高値で売却が可能な状態)場合行使するという選択になります。

2.の「権利を放棄する」を選択する条件としては1月29日にビットコインが40,000ドル未満だった場合(40,000ドル未満であれば実勢レートで購入した方が低いレートで購入できるため)には権利を放棄するを選択することになります。

これがオプション取引です。オプション取引の基本的な内容については、別の記事で説明しているため参考にして頂ければと思います。

オプション取引を利用したトレードとは

では、次に機関投資家が行っているオプション取引を利用したトレード方法について解説するとともに、どのように現物価格に影響を与えているのかを解説します。

オプションには、横文字の難しい「リスクパラメータ」というものがありますが、当記事では触れません。どのようなトレードをしているのかイメージを伝えることを重視しており、説明不足な点があることはご容赦ください。

さて、1月上旬に大きく高騰したビットコインのオプション市場では、36,000ドルと52,000ドルに大きなオプションのポジションが発生したことで、SNS上でも話題となりました。

下記が1月2日におけるオプションの出来高で、36,000ドルに17,000BTC以上、52,000ドルに11,000BTC以上の、過去最大規模のポジションが積み上がっていることが把握できます。

オプション建玉

1月上旬で36,000ドルの価格は上方向にブレイクしましたが、以前からこの36,000ドルのオプションのポジションを保有している投資家はどのような動きをしていたと想定されるのでしょうか。

コール買いのケース

36,000ドルの行使価格のコールオプションを保有していた投資家は、36,000ドルを超えているため、「インザマネー」となり、オプションを行使すれば利益が出る水準となりました。

しかし、「権利行使日」までまだ残りの日数があります。その場合、機関投資家含めオプショントレーダーが行うトレードとして、36,000ドルを挟んで両サイド利益を取ろうとする動きが出やすくなります。

例えば、40,000ドルまで到達した場合に36,000ドルのコールオプションを10BTC分保有しているとした場合、5BTCだけショートポジションを作る(一部利益確定と同様の効果)ことで、利益を一旦確定させます。

これにより、もし40,000ドルから44,000ドルや50,000ドルまで到達した場合、5BTC分オプションのポジションから評価益が出ます。

一方で、36,000ドルの権利行使価格まで急落したとしても、5BTC分ショートしているため、先物でショートポジション分利益が出るということです。

仮想通貨市場では、結果的に36,000ドルの権利行使価格までBTC価格が下落したため、ここでショートポジションを買い戻すことでオプションによる利益のチャンスは無くなったものの、先物ショートで利益が出ることになります。

コール売りのケース

次に36,000ドルのコールを売却している投資家の場合、どのような行動が想定されるのでしょうか。

36,000ドルに近づくに連れて、損失を被る可能性が高くなるため、オプションを売却している数量のうち、ヘッジをしておきたいという守りに入る可能性が高くなります。そのため、35,000ドルを超えてくると、オプションをショートしている投資家のヘッジの現物買いや先物でのロングポジションのフローが出始めます。

35,000ドルでロングを作っておき、もしも40,000ドルまで到達した場合オプションでは4,000ドル負けているとしても、ヘッジのポジションで5,000ドル利益が出ているということになります。

上記のように、オプションを勝った側と売った側の立場になって考えると、オプションの権利行使価格に大きなポジションが積み上がっていた場合、現物や先物に与える影響も大きくなるということが理解できるのではないでしょうか。

つまり、大きなポジションがあるオプション価格の水準に収斂しやすいフローが出るということが理解できると思います。

BTC/JPY日足

上記の画像は、2021年1月で36,000ドルのポジションが出来上がった後の動きで、上下の動きでどのようなフローが出るのか視覚的に理解できるよう作成しました。

この他にもオプションでは、「ガンマトレーディング」等オプション価格の動きと現物価格の値幅を利用したトレーディング手法等色々オプションでは手法が存在しますが、今回は一番わかりやすい方法をご紹介しました。

まだ52,000ドルまでの水準は遠いですが、近づいてくる場合に上記のフローを思い出して頂き、トレードの参考として頂けると嬉しいです。

中島 翔氏の寄稿記事

学生時代にFX、先物、オプションを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。あおぞら銀行でMBS投資業務に従事。三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワード、オプショントレーダー、Coincheckでの仮想通貨トレーディングとトレーダーを経験し、その後NYブロックチェーン関連のVCに所属 。投資ブログ「FXの車窓から」を運営【保有資格】証券アナリスト

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