中国による香港への「国家安全法」導入をめぐり、主要国から批判が相次いでいる。英国のジョンソン首相は香港市民に対し「英国の市民権取得に道を開く」と表明した。しかし、香港居住権をもつ在英ジャーナリストのさかいもとみ氏は「中国との板挟み状態にある中、本当に実現するかは不透明だ」と指摘する――。
イギリスのボリス・ジョンソン首相=2020年6月16日

イギリスのボリス・ジョンソン首相=2020年6月16日

「英国市民権取得に道を開く」と表明

香港では過去数年間、幾度となく市民による自治を求めるデモや抗議活動が頻繁に繰り返されている。特に2019年以降は「逃亡犯条例改正案の完全な撤回」「デモの暴動認定の取り消し」などの5項目を実現するための大規模デモが週末ごとに繰り返された。活動家と警察隊との衝突が過激化し、双方の暴力的な応酬が起きている映像を見て「これが香港で起こっている事態なのか?」とにわかに信じられない印象を持った人もいただろう。

ただ、衝突が頻発するも旧宗主国・英国の動きはすこぶる悪かった上、各国による中国への事態収拾に向けた働きかけが積極的に行われる気配もなく「世界から見捨てられたデモ」という印象が強かった。

一方で中国は2020年に入り、香港での政治的、社会的混乱を食い止めるべく、香港の治安維持活動に法的根拠を持たせる「国家安全法」の施行に道を開いた。

そして、国際的秩序を重んじる英国はここへきて、ついに声を上げた格好となっている。

ジョンソン首相は香港住民300万人に対し「英国の市民権取得に道を開く」考えを明らかにした。また、中国には「国家安全法を香港に実施するならば、それはすなわち中国が国連に付託された法的拘束力のある中英共同声明に基づく義務と『直接的に対立』する」と訴えた。

つまり、中国が今行っていることに対し、国際的なルールに基づく「ノー」という意思を真っ向から突きつけたのだ。