医療現場の逼迫が続く中、インターネット上で遠隔診療を行う「オンライン診療」に注目が集まっている。これに先立ち、フィリップス、それにトヨタやソフトバンクなどで作るモネが協力して、過疎地域で遠隔診療ができる移動診療車を開発した。その驚くべき機能とは――。

※本稿は、中村尚樹『ストーリーで理解する 日本一わかりやすいMaaS&CASE』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

フィリップスとモネが共同で開発した移動診療車「ヘルスケアモビリティ」。トヨタ・ハイエースの福祉車両を改造している

フィリップスとモネが共同で開発した移動診療車「ヘルスケアモビリティ」。トヨタ・ハイエースの福祉車両を改造している

実は「遠距離でのオンライン診療」は認められていなかった

「オンライン診療」とは、予約や診察、処方や決済まで、インターネット上で行う遠隔診療である。離島やへき地などの患者に対しては、1997年から「遠隔診療」が認められてきた。情報通信技術の著しい進歩を背景に、2018年、厚生労働省が遠隔診療という用語をオンライン診療に改めた上で、その指針を発表し、ビデオ通話を用いたオンライン診療が一般にも認められるようになった。

仕事や家事などの都合、あるいは身体が不自由なため、頻繁に医療機関を訪れることの難しい患者が、スマートフォンなどを利用して手軽にオンライン診療が利用できるようになったのだ。

とはいうものの、制限は多い。対象となる疾患は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、あるいは小児特定疾患、てんかんなど、状態が安定していて、毎月の対面診療までは必要がなく、オンライン診療を活用することが治療の継続に有効であると認められるものに限られている。急性疾患は対象外だ。認められている疾患でも、初診と3カ月ごとには、対面診療が求められている。さらに、緊急の事態に備えて、「おおむね30分以内に対面診療が可能な体制を有していること」と決められている。

つまり遠距離でのオンライン診療は認められていない。また、医療を提供する医療者側には、スマートフォンなどのテレビ電話だけで安全な医療を提供できるのか、そのコストはどのように負担するのかなど、懐疑的な意見を持つ専門家も少なくない。