IBMと提携して開発
米ニューヨーク・タイムズ紙が進めている、報道写真の真偽を明らかにするプロジェクト「ニュース・プルーブナンス・プロジェクト(プルーブナンス=起源)」は新たにその進捗状況を明らかにした。
テクノロジーの発展とともに、写真の誤った使用はますます問題となりつつある。記憶に新しいのはインターネット上での新型コロナに関する情報の混乱だ。
ツイッター上ではマスクを付けた医療従事者やロックダウンされた街の様子の写真と共に現状を伝えるツイートも数多く拡散されたが、肝心の写真が数週間前のものであったり、別の場所のものだった事例が散見された。この多くは写真が二次転載されていることから生じている。
また、写真の誤利用の問題はフェイクニュースなど悪意のある情報発信によっても引き起こされる。
米有力紙のニューヨークタイムズはIBMと提携し、ブロックチェーン上に写真についての情報(メタデータ)を記録することで、その真偽を明らかにするプロジェクトを進めてきた。
プロダクトマネージャーのブログによると、まずどのように読者が写真の真偽を判断しているかを調査したところ、そもそも写真の真偽を気にしていない人々も一定数いることが明らかになったという。
このため、ナッジ(行動インサイト関連)などを用いて、読者が写真の真偽を気にするよう仕向けるなどの対策を行いつつ、架空のメディア、SNS上からなるネットワークを形成しプロトタイプを作成した。
プロトタイプでは報道機関が写真の起源を知っており、責任を持っているという仮定のもとで実施、架空のSNSでは以下のような言葉が写真と共に載せられている。
「自分でチェックしよう。この写真は何を示している?」
この部分をクリックすると、写真がいつどこで、誰によって撮られたかの情報を見ることができる。また、事前調査をもとに、その写真がどのメディアなどから発信されたかを確認できる機能も追加された。
実験について現時点で以下のように結論付けられている。
プロトタイプをユーザーで試してみたところ、ソーシャルメディアの写真についての判断を効果的に手助けすることができるということが分かった。しかし、さらに多くの研究がされる余地はある。
また、実験ではシンプルなスマートコントラクトを用いて写真の記録変更を自動的に承認したが、実際はより複雑なプロセスになるだろうとした。
近年ではディープフェイクなど、最初から偽の画像・動画を作成する技術も進歩しており、情報の出所はますます重要性を増している。
今回、ブロックチェーンは偽情報が氾濫する現状に対する打開策として、その有効性を示した形だ。また、写真だけでなく動画、音声記録などについても応用できる可能性もあるという。
参考:NYT Open