OCCによる国法銀行設立の許可に異議
米国議会の上院銀行委員会の長を務めるSherrod Brown議員は米通貨監督庁(OCC)長官代理宛てに、公開書簡を提出。仮想通貨企業に国法銀行設立の許可を与えたことについて異議を唱えている。
OCCは、Brian Brooks氏が長官代理を務めていた期間に、フィンテック企業にも国法銀行の設立を許可。カストディ企業のAnchorageやProtego、大手ブローカーPaxosなどの仮想通貨関連企業も、条件付きの認可(OCCが規定したリスク管理や流動性の条件を満たすという条件)を得ていた。
Brown議員は、これらの企業が本来銀行が満たすべき一連の規制基準や消費者保護基準を満たしていない懸念があるとした。
書簡によると、例えばPaxosが「銀行レベルの監督を受けた最先端のテクノロジー」を標榜しているように、いずれの企業も、連邦政府の認可を受けていることを強調して、その信頼性や安全性が保証されたと考えているように見える。
しかし実際には、仮想通貨の高いボラティリティ(価格変動)や、イーロン・マスク氏の事例など著名な個人の発言により市場に影響が及ぶ現状、その他不確実性を考慮すると、仮想通貨関連企業を規制面で従来の銀行と同等に扱うべきではないと主張した。
Brown議員はこうした理由を挙げた上で、通貨監督庁(OCC)への要請として、すでに与えた条件付きの国法銀行設立許可について見直し、その間は、銀行以外の機関に対する銀行設立の承認を停止するように訴えた。
また許可基準の厳格さや、許可申請者間の公平性を保つために、Anchorageなど仮想通貨企業に許可を与えた際の、OCC内で行われた手順やガイドラインを見直すことも要求する格好だ。
OCCは仮想通貨関連政策を一時保留
一方、OCCの新長官代理Michael Hsu氏はすでに国法銀行設立許可も含め、Brooks前長官代理が導入した、仮想通貨関連の政策を一時保留して見直すと発表している。
Brown議員からの公開書簡が提出された5月19日には、下院金融サービス委員会に出席。国法銀行許可の見直し理由について「仮想通貨企業が国法銀行を設立することの必要性や、それが関連分野にどのような影響をもたらすかを調査するため」と説明した。
Hsu氏は同時に「当局は仮想通貨やフィンテック企業を承認する方法を見出す必要がある」と語り、現在省庁ごとに仮想通貨に関して規制が分断され、統一した基準がないことについても懸念を表明。FRBや連邦預金保険公社(FDIC)とも協力して、仮想通貨規制を検討する可能性を示唆している。
国法銀行免許の恩恵とは
なお前長官代理のBrooks氏は、フィンテックや仮想通貨関連企業に国法銀行の設立許可を与えることについて、新興の決済企業にも事業展開の機会を開くため有益としていた。
Brooks氏によれば、米国では州ごとに規則が異なる分野があり、これを満たすためには煩雑でコストのかかる手続きが必要となる。銀行免許を取得すれば、こうした手続きを緩和することが可能だ。こうした立場への反対は「既存の銀行を保護すること」などを主な理由としているとBrooks氏は議論した。
Paxosは以前、国法銀行の免許は、金融企業が州の境界を越えてより簡単に事業を行うことができるように設計されていると説明。新興企業がよりよい製品の構築などにリソースを集中させることができるようになると述べている。
許可を受けて、Paxosは拠点とするニューヨーク以外で、新たに全米向けの信託銀行も立ち上げることを予定していた。すでに条件付きで銀行設立許可が降りているPaxosなどの企業が、OCCによる方針見直しの影響を受けるのかは、まだ現在明確になっていない。