分散型データ取引所SAGA
仮想通貨プロジェクトのオントロジーは、新型コロナの影響によりオンラインで開催された仮想通貨・ブロックチェーンカンファレンス「コンセンサス」にて、新たなプロダクトを発表した。
開発中の新プロダクト「SAGA」は、x管理者を介さずに、様々なデータの取引を行う分散型データ取引所『SAGA分散型プラットフォームとなる。データの所有権は提供した本人に持たせつつ、データに関わる人の間で安全かつ効率的に取引が行われ、提供者にも適切な報酬が支払われる仕組みだ。
データ市場を巡る現状、そして課題とは
5月13日に開催されたコンセンサスでは、オントロジーのブースにて「SAGA」プロジェクトの開発責任者らがスピーカーとして登場、YouTubeなどでライブ配信が行われた。
SAGA DAYと名付けられた本イベントでは、なぜデータマーケットプレイスを構築するのか、データ市場の現状などからその将来性を語った。
近年、米国のGAFAや中国のBATなど巨大テック企業群の台頭と共に、個人的なものを含めた様々なデータの利用とその需要が急速に拡大・発展してきたのは誰もが知るところだ。
オントロジーは、この「データ主導のエコノミー」の拡大トレンドが今後5年間も続いていくと考えている。例えば、英国ではデータ経済において、いまだ実現されていない価値が全体の42%を占めているという。まだまだ未開拓な部分がある市場背景もオントロジーがデータ産業に参入する一つの理由だ。
登壇イベントでは、あらゆるデータが集められデータセンターに保管されているという現状について、開発者らは以下のように語った。
私たちは、サービスプラットフォームがどれほど良いものだとしても、(データセンターのように)巨大なデータを一つの場所で保管している限り、そこにはプライバシーやセキュリティ問題が生まれると考えている。
このようなセキュリティの問題のほか、データの提供者にデータの管理権がないこと、データ自体の信頼性が低く、そのトランザクションコストが高いといった課題が挙げられた。オントロジーは、ブロックチェーンを使い、これらの課題を解決できる可能性があるとみている。
SAGAでは個人や企業がデータを提供し、データを購入できるのは企業のみとなる。データの購入者が企業のみなのは、そもそもデータの売買が各国においてセンシティブなトピックであるためだ。
SAGAの実際の利用の流れとしては、認証済みの個人や企業がデータなどを分散型ストレージに提出、同じく認証を受けた企業が目当てのデータを探し、スマートコントラクトで支払いが済まされるとデータの購入者はデータを閲覧可能になる。もちろん、一連のトランザクションはブロックチェーンに記録される。
SAGAでは、単にデータのやり取りをする場所ではなく、データ分析や、データ処理サービスなども提供される。
また、データトークン(NFTと同様)という仕組みの導入により、データの使用権が移動しながらも、あくまでそのデータの所有権はデータ提供者に保持され続けることになる。
なお、SAGAは現在バージョン1.0を開発中であり、今後変更が行われていく可能性がある。
オントロジー本体との関係は
オントロジーでは、以前からデータ取引所向けのフレームワークの開発を行ってきた。こういった技術や知見がSAGAの開発に活かされている。
また、SAGAはONT IDとも密接に関係するものとなる。ONT IDはオントロジーの包括的なIDサービスで、ウォレットアプリなどからアクセスできる。ユーザーは自身にまつわる様々なデータを、その所有権をだれかに渡すことなく管理することが可能だ。
ユーザーは複数のサードパーティーの認証サービスから認証を受けたり、SNSなどのアカウントを紐づけることで、多様性を備えた包括的なIDをつくることができる。
今回の発表によると、ONT IDがあればデータ取引所であるSAGAにもそのままログインすることが可能になっており、ONT IDとSAGAは密接な関係性を持っている。
SAGAがローンチされることによってONT ID側にもメリットがある。ONT IDの利用者はSAGAへ登録、同意のもと自身の個人情報を提供し、そのデータが購入されることで正当な対価を受け取ることができるからだ。これはONT ID自体の登録増にもつながることが期待できる。
今回のコンセンサスでは、ONT IDについて解説するコーナーも設けられていた。
その中で、ONT IDのユースケースとして、分散型データ取引所のほかに、包括的な金融サービス、コンテンツの取引、医療サービスのように、ONT IDの特徴である複数のソース、情報元による信用体系が活かされる場所が挙げられた。
SAGAはONT IDや分散型データ取引のためのフレームワーク(DDXF)といった、オントロジーがこれまで作り上げてきたエコシステムや、そのテクノロジーをうまく活用する新たなサービスといえる。
参考:SAGA DAY
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