アフリカでのブロックチェーン普及に取り組むジェルリダ
ブロックチェーン開発企業ジェルリダ(Jelurida)のアフリカ支部、ジェルリダ・アフリカ(Jelurida Africa)が、3月初旬から約1ヶ月間、アフリカ諸国で教育目的のオンラインミートアップを開催した。
ブロックチェーンの基礎およびユースケースに関する学習機会提供を目的としたこの一連のミートアップは、タンザニア、ルワンダ、ナイジェリア、ケニアおよびガーナの5つの国において、それぞれ不動産、医療、政治、チャリティおよびフィンテックをテーマに開催。アフリカのブロックチェーン事情に精通した様々な有識者が登壇した。
ミートアップの内容はアフリカのみに限定されたものではなく、各分野および業界におけるブロックチェーンのあり方について包括的に語られている。ミートアップの一部は、YouTubeから視聴可能だ(英語のみ)。
ブロックチェーンと不動産
ミートアップシリーズの第一回目は、「ブロックチェーンと不動産」をテーマにタンザニアで行われた。初回のこのミートアップは、ジェルリダ・アフリカ代表Adedayo Adebajo氏およびジェルリダ・アフリカのタンザニア代表Charles Chale氏がモデレータとなり、タンザニア最大の都市、ダルエスサラームの教育機関Practical School of Journalism(PSJ)にて実施。PSJの学生、ブロックチェーン愛好家およびダルエスサラーム市民が参加した。ミートアップのライブ配信も同時に行われた。
Adebajo氏はまず、「ブロックチェーンとは何か」という基礎的な内容からセッションを開始し、ブロックチェーンがどのように不動産業界を変革しているのかについて説明した。Adebajo氏は、スマートコントラクトの発明により不動産がトークン化できるようになったことがパラダイムシフトとなったと述べ、不動産をトークン化する利点として、流動性向上、所有権の分割、取引コスト削減、分散化による不動産バブル回避、仲介業者の排除などを挙げた。
また同氏は、タンザニアの不動産市場が国内GDPの約3%を占めており、15年から19年までの4年間で25%の成長率を記録したことや、住宅市場の7割を個人の住宅所有者が占めているという特徴に触れ、今後さらなる発展が期待されているセクターであることを強調した。
ブロックチェーンとチャリティ
「ブロックチェーンとチャリティ」を題材としてケニアで行われたミートアップでは、ブロックチェーン技術を活用している慈善団体GiveSafelyのCEO、Ezra Vazquez-D’Amico氏が登壇。GiveSafelyの実例に言及しながら、現在のユースケースや今後の可能性、ブロックチェーン導入に伴うリスクなど、チャリティ分野でのブロックチェーン活用について幅広く取り上げた。
Vazquez氏によると、ブロックチェーン技術の導入により、寄付者がチャリティと関わる方法が、従来とは異なってくるという。例えば、資金提供の安全性が向上されるだけでなく、ブロックチェーン上のプラットフォームで、トークンの形で寄付者に対して報酬を提供することにより、チャリティにゲーム要素を加えることができる。またガバナンストークンのような機能を備えたトークンを発行することにより、寄付者も慈善団体の意思決定プロセスへ参加可能になる。
一方で、従来のチャリティの仕組みを変容させるような機会が提供されているにもかかわらず、ブロックチェーンがチャリティ業界で普及していない原因は、詐欺の蔓延やブロックチェーンの複雑性、制限の多い規制にあると同氏は分析している。
また、価格変動の激しい仮想通貨で寄付を受け付けるにあたり、どのようにしてボラティリティに付随するリスクに対処すべきかと、オーディエンスから質問を受けたVazquez氏は、各チャリティプロジェクトはまず初めに、ボラティリティを考慮した方針および手順を確立すべきだと回答した。価値上昇を見越して集めた寄付を仮想通貨のまま保有しておくか、リスクを回避して即座に現金に交換するかは、各プロジェクトの戦略によって異なるが、資産管理方法を予め明確にしておく必要があると述べた。
ブロックチェーンとフィンテック
ミートアップシリーズ最終回となるガーナのセッションでは、デジタル分野で職を求める若者の育成に取り組むガーナの非営利組織Hacklab Foundationの代表、Foster Awintiti Akugri氏、および送金アプリ開発企業Pesabaseのマーケティング代表Roselyne Wanjiru氏が、ブロックチェーンが金融を変化させる可能性について語った。
モデレータを務めたジェルリダ・アフリカのAdebajo氏から、ブロックチェーン基盤のコインやトークンが乱立している現状について意見を求められたAkugri氏は、「テクノロジーにより権力の民主化および分散化が進んでいるが、持続的に発展するには、中央機関がこのような取り組みを統率する必要がある」と持論を展開した。
また同氏は、投資家に対して、投資先のプロジェクトの実現可能性を注視すべきだと助言。このようなデュー・デリジェンスが、資金保護に大いに役立つと述べた。
Akugri氏に続いて登壇したPesabaseのWanjiru氏は、アフリカの送金事情やPesabaseのソリューションについて言及。同氏のプレゼンテーションによると、アフリカへの送金またはアフリカからの送金には、平均で9.5%の手数料がかかるという。また、アフリカでの国境を越えた送金には平均15%の手数料が必要で、手数料が送金の障壁になっていることが問題視されている。
Pesabaseではこのような課題へのソリューションとして、ブロックチェーンを活用した送金アプリケーションを開発。モバイルアプリだけで容易に送金できるだけでなく、手数料はわずか1%と、従来の送金システムと比較して格段にコストが低くなっている。
また、ミートアップ参加者から仮想通貨投資での注意点について尋ねられたWanjiru氏は、気をつけるべきプロジェクトの特徴として、実現不可能な利益が保証されている、規制当局から認証されていない、強欲さが窺える、巧妙な手口で投資へ誘い込む、といった4点を列挙している。
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