機密データを安全に共有することが可能に
オープンソースブロックチェーン「Corda」の開発主導で知られる米大手ブロックチェーン企業R3社が、機密データを扱う新製品をリリースした。
新製品は、機密のビジネスデータを保護するコンピューティングプラットフォーム「Conclave」だ。
Conclaveを使用すると、企業は実データを誰にも公開することなく、データセットを安全に集約できるという。R3社は「データ所有者が、データの処理方法をコントロール」して「不正を検出、コストを削減し、価値あるマルチパーティ分析を構築できる」ものだとしている。
Conclaveは現在、独立プラットフォームとして利用可能で、R3社の主力ブロックチェーンプラットフォーム「Corda Enterprise」と互換性がある。Corda EnterpriseとConclaveの完全な統合も、まもなく実施される予定だという。
Conclaveが活用できるシーン
この新製品の具体的な使用例も幾つか示されている。
デジタル金融分野の企業IntellectEUの責任者Chaim Finizola氏はConclaveについて、同社の保険プラットフォームを補完するとして次のように語った。
疑わしい保険請求に関わるプライベートなデータを保険会社間で照合することにより、不正な二重請求を防ぐことができる。Conclaveを使用することで、リアルタイムで不正行為を監視することに一歩近づく。
また、Conclaveの公式サイトでも潜在的な導入事例が挙げられた。
例えば病院の関係者が、臨床試験を実施している研究会社に、機密性の高い患者の医療記録を送信する場合だ。この場合、研究会社の従業員が不正にデータを盗んだり、患者が同意しない方法で使用するリスクも存在している。
こうした場合に、Conclaveが提供する「機密コンピューティング」を使うと、他人の手に渡ったときにも、データを保護することが可能だ。
具体的には、データを共有する他の企業が使用するアルゴリズムを調べ、またその企業の従業員がプライベートなデータを確認したり、アルゴリズムを変更したりできないという設定ができる。
機密コンピューティングの世界は「非常に大きい」
マーケットリサーチ企業IDCのリサーチマネージャー、Ralf Helkenberg氏は機密コンピューティングについて、次のように述べた。
今日の企業は、データ保護規制とデータ主導のビジネス成果の達成の間で綱渡りをしている。R3社のConclaveプラットフォームは、Intelのハードウェアベースの機密コンピューティングテクノロジーを活用して、機密データを安全で信頼性高く、法的遵守する方法で扱い、企業がコラボレーションとイノベーションを加速できるようにする。
こうした「データ保護規制とデータ主導のビジネス成果」の両立を可能にする機密コンピューティングについて、R3社は「この世界は非常に大きく、まだ十分に探索されていない」もので、できるだけ多くのイノベーターが参加することを望むとした。
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