イーサリアムDeFiのオンランプソリューション、RAMPとは
20年夏以降成長を続けているDeFi(分散型金融)分野では、ユーザー数および総ロック額が共に増加し続けています。著しい成長率が観察されている一方、多くのプロジェクトがイーサリアム上に構築されており、ERC-20(イーサリアムのトークン発行規格)トークンを保有していないユーザーにとって、参入障壁が高くなっていることが、課題の一つとして挙げられています。
この課題解決に取り組んでいるプロジェクトの一つが、RAMPです。RAMPでは、イーサリアム以外のPoS(Proof-of-Stake)ブロックチェーン資産を担保に、イーサリアム上でステーブルコイン発行を可能にしています。これにより、イーサリアムへの「オンランプ」機能が提供され、イーサリアムエコシステム外のユーザーへ、イーサリアム基盤のDeFiへ参加する機会が開かれると期待されています。
本記事では、RAMPエコシステムを稼働させているネイティブトークンRAMPを含む、RAMPプロジェクトの概要を解説します。
1. RAMPとは
1-1 RAMP概要
RAMPとは、イーサリアムへの「オンランプ」ソリューションを提供している分散型プロトコルです。RAMPが提供するオンランプソリューションとは、イーサリアム以外の仮想通貨を所有しているユーザーが、イーサリアム基盤のDeFiサービスを利用できるようにするソリューションです。
RAMPでは、RAMPが統合されているブロックチェーンの非ERC-20資産(IOSTブロックチェーンのIOSTトークンやTezosブロックチェーンのXZT)を、担保としてプロトコルにステークすることにより、イーサリアムブロックチェーン上で、ERC-20規格のステーブルコイン「rUSD」を発行できます。rUSDは、イーサリアムのDeFiエコシステム内で自由に利用可能なため、イーサリアムおよびその他チェーン間のブリッジとして機能しています。
このような仕組みにより、非イーサリアム資産を保有しているユーザーは、新たなERC-20トークンを購入する必要なく、イーサリアム基盤のDeFiへ参入することが可能です。
また、非イーサリアム資産をチェーンにステークしたままrUSDが発行できるため、イーサリアム基盤のDeFi参入にあたり、元々資産を保有していたチェーンでのステーキング報酬を放棄する必要がありません。担保にしている資産の所有権も維持できるため、担保資産の価値が上昇した場合は、価値上昇分の利益も享受できます。
rUSD発行者に対しては、ステーキングの報酬として、RAMPトークン(下記2参照)が付与されており、イールドファーミングの機会も提供されています。
1-2 開発背景
DeFi(分散型金融)とは、20年夏のイールドファーミングおよび流動性マイニングの流行以降、注目を浴びている仮想通貨の分野であり、執筆時点で206億ドル(約2兆1,400億円)以上がイーサリアムブロックチェーン上のプロトコルにロックされています。
今後も発展が期待されている反面、プロダクトの多くがイーサリアムブロックチェーン上で構築されているため、イーサリアム以外で資産を保有しているユーザーが効率的にDeFiに参加できない、またはエコシステムから除外されているという課題が存在しています。このようなユーザーがDeFiに参入するには、ERC-20トークンの購入が必要で、手間もリスクも増えることになり、積極的なDeFiへの関与が難しくなっています。
RAMPプロジェクトは、このような課題を解決するために開発されました。
DeFiでは、規模を表す指標の一つとして、TVL(Total Value Locked/総ロック額)が使用されますが、RAMPでは、TVLでなく、TVU(Total Velue Unlocked/ロック・ステークが解除された額)に焦点を当てています。
Staking Rewardのデータによると、RAMPライトペーパー更新時点では、PoSグローバル市場全体の時価総額は1,560億ドル(約16兆2,500億円)を超えています。RAMPでは、このような規模を誇るPoS市場から価値をUnlock(ロック・ステーク解除)し、イーサリアムDeFiへ参入するためのツールを与えることにより、PoSチェーンユーザーの資産運用幅を広げています。
1-3 RAMPエコシステム概要
現在RAMPでは、以下の図のようなエコシステムが構築されています。
rStake
RAMPエコシステム内の最初のプロダクト「rStake」は、イーサリアム以外のブロックチェーン上に構築され、ステーキングノードのアグリゲーターとして機能しています。rStakeでは、各チェーンの資産がステークされ、それら資産と同量のラップドトークンが発行されます。
ステーキングに参加したユーザーは、ステーキング報酬の70%を受け取ることができます。ステーキング報酬と同時に、RAMPトークンも報酬として付与されます。rStakeには、ウォレット連携機能もあり、rStakeに資産をステークしたユーザーのウォレットを、イーサリアム対応ウォレットと連携させているため、資産をステークしたユーザーは、連携先のイーサリアムウォレットでRAMPトークンを受け取ることができます。
受け取ったステーキング報酬に応じて、手数料も発生します。この手数料はrBurn(下記参照)で、RAMPトークンのバーン(焼却)に利用されます。
rMint
rMintでは、rStakeで発行されたラップドトークンを担保に、ERC-20規格のステーブルコイン「rUSD」を生成し、イーサリアムブロックチェーンへrUSDを橋渡しします。発行されたrUSDは、他のERC-20トークンと同様、DEX(分散型取引所)での交換や、イールドファーミングに利用可能です。
rUSDの価格は、法定通貨に裏付けられたステーブルコインの価格にペッグされており、市場の需給に応じたアービトラージ、およびrTreasuryでの清算(下記参照)によって、調整されています。
rUSDの価格が、ペッグより上方に乖離した場合、ユーザーは手持ちの資産を担保にrUSDを発行し、公開市場で売却することにより、価格差分を利益として受け取ることができます。このインセンティブが与えられていることにより、rUSD価格が上昇した際に、市場に流通するrUSDが増加し、価格が下方に修正されます。反対にrUSDの価格が下方に乖離した場合、ユーザーにrUSDを買い戻し、担保ポジションを抜けるインセンティブが与えられるため、rUSD価格が上方に修正されます。
rMintの正式ローンチは、2021年第一四半期に予定されています。
Vault
Vaultとは、RAMPおよびrUSDの有用性を、最適化するためのプロダクトです。現在Vaultでは、RAMP/ETHの流動性マイニングVault、およびRAMPトークンステーキングVaultの二つが、アルファ版で提供されています。
RAMP/ETH Vaultでは、分散型取引所UniswapにRAMP/ETHペアの流動性を提供すると受け取ることができるLPトークン(流動性提供を証明するトークン)を預けることにより、流動性提供の報酬としてRAMPトークンを獲得できます。一方RAMP Vaultでは、RAMPトークンを預け、RAMPトークンを報酬として受け取ります。
今後は、以下の機能のサポートが計画されています。
- RAMPトークンおよびrUSDのステーキングおよび流動性提供報酬付与
- RAMPトークン、rUSD、USDTおよびUSDCトレード専用の流動性プール
- RAMPトークンおよびrUSDのイールドファーミングサポート
- RAMPトークンおよびrUSDを原資産としたデリバティブ
rTreasury
rTreasuryでは、rUSDの価格維持のため行われる、担保清算プロセスを受け持ちます。
RAMPでは、rUSD発行に利用した担保資産の価値が下落し過ぎた場合、担保ポジションが清算されます。rTreasuryでは、清算された資産を、その資産を担保に発行したrUSDと同等量のUSDTまたはUSDCに交換します。その後、rUSDの価格がUSDTおよびUSDCより安い時に、rUSDを買い戻します。このプロセスにより、rUSDの価値が安定する仕組みになっています。
rMintと同様に、rTreasuryの正式ローンチも、2021年第一四半期に予定されています。
rBurn
コミュニティのフィードバックに基づき構築されたrBurnでは、rStakeで発生した手数料をUSDTに交換し、そのUSDTでRAMPトークンを購入、およびRAMPトークンのバーンを実行します。これにより、RAMPトークンの流通量が減少し、相対的に価値が上昇します。
2. RAMPトークンとは
2-1 RAMPトークン概要
RAMPトークンとは、RAMPエコシステムのネイティブトークンであり、ユーティリティトークンおよびガバナンストークンとして利用されています。
トークン発行総数 | 1,000,000,000 RAMP(ローンチ時に全て発行済み) |
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内訳 | ファーミング報酬:45%、チームおよびアドバイザー:16%、プロトコルのリザーブおよび提携パートナー割り当て:20%、プライベートセール:18%、パブリックセール:1% |
プライベートセール | 1RAMPあたり0.006ドル(約0.6円)で1億8,000万RAMPを販売、108万ドル(約1億1,200万円)を調達 |
パブリックセール | 1RAMPあたり0.008ドル(約0.8円)で1,000万RAMPを販売、8万ドル(約830万円)を調達 |
2-2 RAMPトークンのユースケース
ステーキング報酬
rUSD発行の際に資産をステークしたユーザーに対して、その報酬としてRAMPトークンが付与されます。
ガバナンス参加
RAMPトークンは、ガバナンストークンとして機能しているため、RAMPトークン保有者はRAMPプロジェクトの分散型ガバナンスに参加できます。RAMP保有者は、RAMPをステークすることにより、プロトコルの変更提案(CP; Change Proposal)に投票できます。50万RAMP(現在の価格で約870万円)以上保有しているユーザーのみ、CPを提出可能です。CPが可決されるには、一定数の投票を得なければなりません。
トークンバーン
プロトコルで生じた手数料は、rBurnと呼ばれるプロダクトへ送られ、RAMPトークンのバーンに利用されます。この仕組みにより、RAMPトークンの供給量が経時的に減少するため、トークンの価値が上昇し、トークン保有者へ利益が還元されます。
担保資産
プロトコルで承認されているトークンと同様に、RAMPトークンを担保に、rUSDを発行することも可能です。
3. 提携パートナー
3-1 IOST、TomoChain、Tezos
RAMPは、20年9月に国内初上場となったIOST、スケーラビリティに注力して開発を行うTomoChain、およびスマートコントラクトや分散型アプリケーションに適したTezosの三つのブロックチェーンに、エコシステム内の最初のプロダクトであるrStakeを統合したことを、20年12月に発表しました。これにより、IOST、TOMOまたはXTZ保有者は、rStakeに資産をステークすると、ステーキング報酬およびRAMPトークンを獲得できるようになりました。
今後は、これらのブロックチェーン上で、rMintの統合も実施される予定です。
3-2 The Graph
RAMPは、21年1月に、ブロックチェーン上のデータ検索プロトコル「The Graph」で、インデックサーとしてノードをローンチしたことを発表しました。
The Graphとは、ブロックチェーン上にあるデータ検索およびインデックスに特化したプロトコルであり、「ブロックチェーン界のGoogle」とも称されています。The Graphでは、Indexer(インデクサー)と呼ばれるノードが、インデックスおよびクエリ処理を行っています。
ノード運営の一環として、RAMPは、自身のプロダクトであるrBurnを、The Graphに統合しました。これにより、ノード運営で受け取った手数料でRAMPトークンを購入し、トークンのバーンが可能になります。
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