SECが適格投資家および私募市場のハードル引き下げ、仮想通貨資金調達に追い風か

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SEC新ルールのメリット

米証券取引委員会(SEC)が日本時間木曜日、「適格投資家(Accredited Investor)」の定義範囲を拡大し、新たな適格条件を加えたことを発表した。

これまで、所得か資産条件を満たすと、団体でも個人で適格投資家になり得て、SECに登録されていない、いわゆる私募証券を購入する「特権」を与えられる。

SECのレギュレーションDのRule 501によると、適格投資家になる条件として、未登録証券の専門知識を示す十分な教育を受けていることや、関連職務経験を示せるほか、重要な財務的条件として以下のように規定している。

  • 所得条件:過去2年間で、個人で年収20万ドル以上、夫婦で30万ドル以上あること
  • 資産条件:個人単独または夫婦で、純資産が100万ドル以上あること
  • 事業体が民間の事業開発会者または資産が500万ドルを超える組織
  • 適格投資家である株式所有者で構成する事業体

一方、新たに加えられた条件では、上述の厳格な所得・資産条件を満たせなくて、「専門知識、経験、または資格を基準に、適格投資家として見なすことが可能」としている。例えば、私募証券の販売などに従事する経験や資格を持つ個人など、SECに登録している投資アドバイザーが当てはまる。つまり、多額な資産を所有しない投資に詳しい人でも私募市場に参加する機会が増える意味だ。

また、今後より多くの資格証明書の持ち主も適用範囲に加える可能性もある、とSECは説明した。

個人の適用範囲の拡大のほか、先住アメリカ人の部族政府、政府機関、家族の資産管理ファンド、そして海外の法律に準ずる企業や団体も、500万ドル以上の資産を管理している場合では適格投資家として見なされ得るという。

SECの今回のルール改正を支持するPeirceコミッショナー(愛称:クリプトママ)は、投資家を保護する観点から、裕福な個人の純資産ではなく、専門知識などの金融リテラシーが基準になるべきだとコメントした。

個人の経済ステータスは、損失の程度を軽減することはできるが、資産の所有程度では、必ずしもその人の金融リテラシーを証明できるわけではない。

実際、「富」を金融リテラシーの基準としていた昨今では、低所得でありながらも金融・投資に詳しい国民を差別していた。

ークリプトママ

仮想通貨投資への影響は

SECが「適格投資家」の定義を拡大したことで、これまでいわゆる富裕層に限った私募証券への投資だけでなく、一部の仮想通貨のプライベートセールや、グレースゲールの仮想通貨投信の私募への参加も可能になることが見込まれる。

SECはこれまで複数の未登録トークンセール(ICO)に対して取り締まりを行い、罰金などを科していた。合法なトークンセールは、私募証券としてSECに報告する必要がある。そのため、業界の一部では今後、より多くの個人投資家が適格投資家に限定するトークンセールに参加し、これまでよりも多くの資金を市場に流入させることに期待感を寄せている。

しかし、一部の有識者からは慎重な意見もみられる。今回のルール改正は市場が思うほど限度を緩めたわけではないと指摘。法律事務所Kelman Lawのパートナー弁護士Zachary Kelmanは昨年ルール改正が提案された際にCoinDeskに対し、「SECの動きは、私募市場に参加できる個人の範疇を有意義に拡大したわけではない」とコメントした。

また、名門大NYUの法学教授Andrew Hinkesは今回の動きを受け、このように分析した。

現時点では、特に有意義な変更ではなさそうだ。多く証券引受業者がおそらくすでに適格投資家になっているため、今回の定義拡大では、私募証券を販売している登録業者が適格対象に加わることになるぐらいだ。

ただし、今後より多くの資格証明書の持ち主も適用範囲に加えられることがもたらし得る「投資家範囲の拡大」は有意義になるだろう。より多くの投資家が私募に参加してほしいのであれば、それらの政策を支持する議員に投票することを推薦する。正式に法律になれば、より確実になるからだ。

参考:SEC

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