ブロックチェーンと従来システムの相互運用性を強化
世界経済フォーラム(WEF)と暗号資産(仮想通貨)Chainlink(LINK)が共同で論文を執筆。ブロックチェーンと従来システムを橋渡しするソリューションについて議論し、その中で分散型オラクルシステムの重要性を指摘した。
従来型データソースをブロックチェーン上で稼働する「スマートコントラクト」に接続し、相互運用性を強化するための技術として、オープンソースの分散型オラクルが提案されている。
オラクルとは、スマートコントラクトに外部情報を提供するためのサードパーティ製サービスのこと。ブロックチェーン外のオフチェーンとオンチェーン間のデータの橋渡し役を担う。Chainlinkは最大の分散型オラクルネットワークであり、Chainlink自体もソリューションとして推薦される形となった。
DeFiのセキュリティを向上
一連の分散型ノードによって実行される分散型オラクルは、スマートコントラクトが外部ソースから取り入れるデータの信憑性を検証するために役立つ。
論文は、企業が相互運用フレームワークを構築するオープンソースコミュニティに参加し、すべてのブロックチェーンで機能する分散型オラクルネットワークを採用することを提唱。オラクルが十分な品質である場合、ブロックチェーンアプリケーションやプロトコルは、オラクルを介して供給されるデータを信頼することができるとした。
この提案は、DeFiプロトコルのセキュリティを確保するためにも有用と考えられる。
過去数ヶ月で、Harvest FinanceやPickle Finance、Value DeFiなど、中央集権型の価格オラクルに依存していたDeFiプロトコルは、高度な価格操作により不正流出被害を被ってきた。実際に、600万ドル(約6億円)を失ったValueDeFiはプライベートオラクルを放棄してChainlinkのオラクルを導入している。
保険などのプロジェクトにも適用可能
論文は、オラクルを活用する具体例としてインドの作物保険システムの改善を挙げた。
作物保険プログラムの運用に使用されているインド政府の従来型システム「全国作物保険ポータル(NCIP)」に分散型オラクルを適用することで、保険の評価や支払いに関するプロセスを安全に自動化することができるという。
保険会社の支払いは、一般的に複数の現場機関が実施する作物の収量評価に本質的に依存しているため、分散型オラクルでこのデータを検証することで、農家への保険支払いが正しいことが保証される。
またNCIPは、既存のシステムと簡単に統合できるAPIなどを使用して、インド気象局などが提供する衛星からの地理空間データや、様々な州政府の記録をポータルに安全に送り込むことができるという。
また重要性の高い気象データを、複数のデータソースを使用して検証し、その正確さや完全性に基づいて適切なインセンティブやペナルティを与えることも可能になるとした。
論文は、その他にも分散型オラクルがソリューションとなる事例として、車両の登録や監視、通関手続き、原産国詐欺の検証などを挙げている。
結論部分では、ブロックチェーンや分散型台帳技術(DLT)は、データの不変性、耐障害性、検閲耐性、分散化などにより商取引のやり方を大きく変える可能性のあるイノベーションだとしている。しかし一方で、企業や政府が現在使用している、データ収集、通信、計算などのためのレガシーシステムは、まだ当分、支配的なツールであり続けるだろうと指摘。
まずは、DLTとレガシーシステムの相互運用性を可能にすることで、ユースケースを実現し、DLTやスマートコントラクトの可能性を高めることに繋がるとした。
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