人の心に刺さるスピーチにはどんな共通点があるのか。NY在住の事業戦略コンサルタント、リップシャッツ信元夏代氏は「ドラマチックに話を盛って語ろうとする人が多いが、過去の自分の体験や気づき、失敗談などを語るほうがいい。たとえばトヨタ自動車の豊田章男社長とアリババ創業者であるジャック・マー氏は、いずれも『4つのF』を用いている」という——。

※本稿は、リップシャッツ信元夏代『世界のエリートは「自分のことば」で人を動かす』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

中国・杭州市にあるアリババ本社

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※写真はイメージです

「未来予想図」を語り、20億円の融資を手に入れたジャック・マー

ストーリーテリングが巧みなビジネスリーダーと言えば、ジャック・マー(※)が筆頭に挙げられるでしょう。

※ECサイト「アリババドットコム」、決済サービス「アリペイ」など、幅広いサービスを展開する「アリババグループ」創業者

1年に1回しか鶏が食べられないという貧しい家庭に育ったジャック・マー。ジャック・マーが語るのはサクセスストーリーではありません。

大学には3回落ち、仕方なく教職につき、それからアメリカに渡っても、ハーバード大には申請しても10回断られたと言います。

「職を探していてもすべて断られました。たとえホテルの仕事であっても、おまえでは容姿が悪すぎると断られたんです」

起業家になるとも想像しておらず、インターネットのビジネスを始めた時も決して大きなビジョンがあったわけではないと語っています。

失敗談を語るための「4つのF」

実はジャック・マーは「4つのF」(① Failures:失敗、過ち、② Flaws:欠点、③ Frustrations:フラストレーション・不満・苦悩、④ Firsts:初めての体験)を利用して、自分の失敗談から始めているのです。つまり、自分の「失敗談」をストーリーの流れに取り入れているのです。

「私がこれほど有能だったからサクセスしたのです」というストーリーではなくて、「失敗続きだった私。でも失敗を何度もしてそこから学んだから、ビジネスを修正して成功できたのです」というストーリーに作っています。

成功ストーリーでは、受け手は「この人が特別だからできたんだろう」と感じるだけですが、失敗をストーリーに入れることで「その方法をマネすれば、自分にもできるかもしれない」と感じさせるわけです。

「成功物語を勉強するな。失敗から学ぶべきだ。過去18年間、私たちは毎日失敗したり拒絶されたりしてきました」

「拒絶されたら痛いのが当たり前です。だからこそ夢に向かって愚かであり続け、闘い続けなくてはなりません。失敗を避けるのではなくて、失敗に立ち向かうことを学ぶのです」

彼のこうしたメッセージは多くの起業家やビジネスパーソンにインスピレーションを与えるものでしょう。