タイ司法裁判所、裁判記録を管理するブロックチェーンネットワーク開発を推進

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ブロックチェーンで裁判記録を管理

司法制度のデジタル化が進むタイで、ブロックチェーンで裁判記録を管理するネットワークの開発が進められていることがわかった。司法裁判所の公式発表によると、このネットワークは2021年に稼働する予定だという。

「D-Court」政策

タイ政府は2015年に、20年に及ぶ長期経済開発計画「タイランド4.0」を発表し、中所得国から高所得国への移行を目標にしている。「イノベーション」、「生産性」、「サービス貿易」がキーワードであり、持続的に付加価値を創造できる社会を目指すが、その実現にはデジタル技術の活用による産業構造の変革が必須だと考えられている。

司法裁判所事務局長のSarawut Benjaku氏は、司法制度のIT化を促進する「D-Court」(デジタル裁判所)は、この「タイランド4.0」に動機づけられており、2020年中に全ての裁判所の手続きをデジタル化するよう設計されていると述べた。D-Courtはまず首都バンコクで導入され、徐々に全国的に展開されるが、進行中の訴訟に関する情報をより早く提供することが期待されている。

例えば、政治家が関与している事件の進捗状況を、これまでの標準だった45日ではなく、3日で知ることができるようになるという。また、オンラインによる手続きで、遺産管理人を指定するための裁判所命令請求を行うことが可能になった。その際、裁判もビデオ電話を通じて行われるとのことだ。

ブロックチェーン技術を利用したネットワーク構築

そして、全国のデジタル裁判所から収集されたデータをブロックチェーンで保管・管理するネットワークを開発中であることが、司法裁判所から公式に発表された。2021年の実用化を目指し、ブロックチェーンシステム運営のための人材育成も行われるという。

タイの裁判制度は日本と異なり、司法裁判所のほか、憲法裁判所、軍事裁判所、行政裁判所の4つの裁判所体系で構成されている。司法裁判所は民事及び刑事事件など、一般的な訴訟を管轄している。

タイのブロックチェーン導入事例

タイは多くの方面で積極的にブロックチェーン技術の導入を模索しているようだ。

中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)の実証実験をはじめ、財務省物品税局による輸出石油の税還付システム及び同省公債管理局による小額債権の発行、入国に必要な査証をデジタル化した電子到着ビザ(eVOA)など多くのブロックチェーンプロジェクトが進行中だ。

今年6月にはエネルギー省がパーム油取引のためのブロックチェーン試験プログラムを開始。椰子農家、バイオディーゼル生産工場、抽出工場、及び取引業者を結びつけ、パーム油価格の安定化を図ることが目的だという。

「タイランド4.0」では、中期目標として2021年までにデジタル国家への移行を目指し、全ての国民がデジタル技術にアクセスし利用できるようにするというビジョンを描いている。司法制度を含む幅広い分野でデジタル化が進むことは、ブロックチェーン活用に向けた第一歩であり、ネットワーク開発にスムーズに移行する条件でもあるだろう。

司法裁判所によるブロックチェーン開発も、国家戦略の中の自然な流れと捉えられるかもしれない。

参考:タイ司法裁判所

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

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