DeFiにおけるスパム取引が手数料牽引か
イーサリアムネットワークが渋滞し手数料が上がる原因について、DeFi(分散型金融)におけるスパム取引が原因との指摘がなされた。
5月以降、イーサリアムの平均手数料は増加し続けており、約8倍にもなっている。その原因としてDeFi市場の成長の影響が大きな要因と考えられてきたが、新たな視点からの分析といえる。
ブロックチェーン技術企業Certus Oneの共同創設者Hendrik Hofstadtによると、過去半年、イーサリアムの人気クライアントソフトGeth(go-ethereum)の構造上の癖を利用し、トレード収益を上げる行為が盛んだという。
イーサリアム取引キューをモニターするボットが利用されており、このボットはUniswapなどDeFiプラットフォームで大規模な取引が行われた際に、即座に注文を出すことで価格変動を利用するのだ。
イーサリアム開発者Philippe Castonguayの大まかなモデリングによると、2018年4月以降、約599万ドル(6.3億円)のガス料金がこうした「バックラン」と呼ばれるスパム取引の実行に使用されていた。
特に、コロナ禍に伴い仮想通貨市場も暴落した3月12日以降に多く行われていることが分かる。
スパム取引は、ネットワーク上で他のトランザクションを停滞させ、すべてのユーザーの手数料を引き上げることに繋がってしまう。
Hendrik HofstadtによるとGethの開発チームは、トランザクションがメモリープールに追加された時間順にソートされるよう変更を行ったという。従来はランダムにソートが行われていた。これにより、「バックラン」取引を減らすことが見込まれる。
DeFi市場の拡大も要因
手数料上昇の原因としてはDeFi市場の活発化も従来から指摘されている。
リサーチ企業Arcaneによって収集されたデータによると、イーサリアムの取引手数料は7月25日時点で、過去2年間で最高額の180万ドル(約1.9億円)を記録、手数料の中央値は0.72ドルで、4月の中央値の約10倍となった。
イーサリアムの価格上昇に伴って多くのトレーダーが市場に戻り、特にDeFiで活動を増加させたことが背景にあるとみられる。
DeFiにロックされている資産総額は過去2か月で約2.3倍増加。特にステーブルコインDAIを発行することができる「Maker」、資金の短期貸借を行う「Compound」、自動ポートフォリオ管理を行う「Balancer」などのプロジェクトに多くの資産が預け入れられた。
ヴィタリックはDeFiのリスクを指摘
興隆するDeFi市場だが、イーサリアム創設者ヴィタリック・ブテリンは、イーサリアム5周年インタビューの中でDeFiがもたらす手数料高騰以外のリスクについても語っていた。
例えば米ドル建てステーブルコインのUSDTを「Compound」のような貸借プロトコルに預けた方が、銀行に米ドルを預けるより高い金利が得られる状況がある。しかしDeFiは歴史が浅く、業界の努力に関わらず、まだ銀行など伝統的金融機関よりもシステム破綻のリスクが高いという。
また、レンディングサービスなどに仮想通貨を預けることで、可能な限り多くの金利収入を得ようとする「イールドファーミング」についても、「一度誘引が無くなれば、利回りは容易く0%近くまで落ちる」もので持続的ではないとした。
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