ビットコインなど仮想通貨税率を20%に
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は日本暗号資産取引業協会(JVCEA)と共同で、2021年度税制改正にあたり、税制改正に関する要望書を取りまとめた。JVCEAの公式サイトなどで発表された。
要望書では冒頭、以下のように強い危機感をにじませた。
我が国は、2017年4月に施行された「改正資金決済法」により世界をリードする立場にあったものの、一方で暗号資産(仮想通貨)に関連する現行の国内税制の適用を回避し、活動拠点を海外に移転する事業者も散見される。
今後見込まれる暗号資産を利用した資金決済分野の革新や、暗号資産を決済手段として用いるブロックチェーン技術の応用による経済社会の高度化に際し、我が国の優位性を損ない、また次世代技術を用いた産業の戦略的な取り込みが、危ぶまれる状況となりつつあるものと思料する。
「税制改正に関する要望書」の要望骨子は、以下の3点だ。
【1】暗号資産のデリバティブ取引について、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。
【2】暗号資産取引にかかる利益への課税方法は、20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとする。
【3】暗号資産取引にかかる利益年間20万円内の少額非課税制度を導入する。
仮想通貨デリバティブ取引に20%の申告分離課税
金融商品先物取引など、デリバティブ取引の決済については、先物取引に係る雑所得等の課税の特例として「20%の分離課税」となるところ、これと同様に、暗号資産のデリバティブ取引については20%の申告分離課税とし、損失については翌年以降3年間、デリバティブ取引に係る所得金額から繰越控除ができることを要望する。
また、今年5月に施行された金融商品取引改正法により、暗号資産は「金融商品」として位置づけられたことで「金融資産性をもつ支払手段という複合的な性質をもつことが明確化されたことになる。」と指摘。「租税の公平性・公正性の観点からも、暗号資産デリバティブ取引につき、他の金融商品先物取引等の決済と同様に、20%の分離課税とすることが求められている」とした。
取引にかかる利益への課税方法
要望書では「20%の申告分離課税施策が講じられることにより、暗号資産の取引参加者が増加すれば、暗号資産の価格安定にもプラスに働く」としたほか、取引参加者の増加について、「トータルでの税収増に加え、利用者にとっても、非登録事業者や海外市場ではなく、犯収法上の取引時確認の義務が課されている国内登録交換事業者を利用した取引を行うインセンティブになり、暗号資産取引にかかるマネー・ローンダリング対応等の点でも健全性の向上が期待できる。」とメリットを挙げた。
市場規模拡大に伴う流動性向上が相場の安定性や健全性に寄与し、金融庁が掲げる「利用者保護」の観点にも資することは、株や為替などの伝統金融市場でも明らかである。
仮想通貨取引の利益に対する税収は、国の貴重な財源として将来的に大きな影響を及ぼし得ることから、20%の申告分離課税の導入は他国との競争力を高め、中・長期的にもプラスに働くものと考えられる。
過剰なまでの規制や税制面で次代を担う新興産業を締め付けたままでは、仮想通貨と表裏一体であるブロックチェーン技術の発展や普及をも阻害しかねないだけでなく、税率面で優遇される他国に大きな遅れを取り、日本だけが新たな産業革命から取り残される事態にもなりかねない。
少額非課税制度の導入
少額非課税制度に関しては、「暗号資産取引について、20万円までの利益にかかる非課税制度を導入することが、既存の制度との整合性の観点から適切である。」と言及した。
金融庁の認可を受けた仮想通貨交換業者ディーカレットが、JR東日本の「Suica」を含む複数の電子マネーで、仮想通貨チャージ出来るサービスを検討していることなども念頭にあるものとみられる。少額決済非課税の実現は、国が推奨する国内キャッシュレスサービスの普及を促進するためにも大きな後押しとなり得る。
この点について共同要望書では、「少額であっても利益が出れば必ず確定申告を要するとなると、決済利用の都度利益の計算が必要となり、利用者の事務的・心理的負担等が大きく、ひいては暗号資産の決済利用の促進を阻害する大きな要因となる。既存の制度に準じた20万円までの利益に対しての少額非課税制度を設けることで、暗号資産の決済利用が促進される」と指摘した。
日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、自民党「予算・税制等に関する政策懇談会」にて業界団体として唯一参加し、毎年要望を行ってきた業界団体だ。今回の要望書提出について、「暗号資産市場の活性化、決済利用の促進を図り、関連産業の発展を期して要望した」としている。
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