INGがデジタル資産業界団体に加入
オランダに拠点を置く総合金融機関INGグループが、仮想通貨を含むデジタル資産の採用を推進する業界団体、グローバル・デジタル・ファイナンス(GDF)に加入し、カストディ・ワーキンググループの共同議長を務めることがわかった。GDFが9日に発表したところによると、INGは同時にGDFの諮問委員会のメンバーとなり、デジタル資産業界をリードする企業とともに、業界の行動規範開発を主導していく。
グローバル・デジタル・ファイナンス(GDF)
GDFは、英ロンドンに拠点を置くデジタル資産の業界会員組織で、「効率的で公正かつ透明性の高い仮想通貨(暗号資産)市場」の実現を目指している。その目的達成のため、「真のデジタル金融のための知識ベースと最も効率の良い方法を構築し、トークンがすべての市場参加者にもたらすメリットを提供」するが、仮想通貨市場を従来の金融サービスに相補的な形で成長、進化するものとして位置付けているようだ。
GDFは、自主的な行動基準の開発を通じて業界に対する信頼を築く努力をしており、これまでに、トークンセールやステーブルコイン発行、KYC/AML(顧客確認、マネロン対策)など9つの分野で、行動規範となる「GDF規約」を作成、公開している。
GDF諮問委員会のメンバーには、米大手取引所コインベース、ブロックチェーン開発企業大手ConsenSys、70社以上の金融機関が参加するコンソーシアムR3をはじめとする業界大手に加えコンサルタント大手EY等、主要企業が名を連ねている。
INGの動き
オランダ、アムステルダムに拠点を置くINGグループは、世界金融機関の評価を行う「Brand Finance」の世界銀行ランキングで米ゴールドマンサックスに次ぐ24位。欧州を基盤とし、55,000人の従業員を抱え世界40カ国以上に事業を展開している。(日本トップはSMBCで世界22位にランクインしている)
今回加盟したINGは、GDFのカストディ・ワーキンググループで先に共同議長を務めてきた「Onchain Custodian」とともに、カストディサービスとカストディ事業者のための行動規範原則の開発を指揮することになるという。
INGのデジタル資産部門ブロックチェーン・イニシアチブを率いるHervé Francoisは、デジタル資産の保管及び移動をサポートする業界ネットワークの確立は「機関レベルのエコシステム」には不可欠であると述べている。
INGによるカストディ技術開発の取り組み
INGは積極的に数々のブロックチェーンプロジェクトに取り組んでいるようだ。
昨年1月には、R3と商用ブロックチェーンプラットフォーム「Corda Enterprise」の5年にわたるライセンス契約を結んだ。同年4月、INGのプロジェクトチームがプライバシー対策の一環として、防弾(bulletproofs)」と呼ばれるプライバシー技術のテストを行っていることが伝えられたが、10月にはCordaの公証サービスにゼロ知識証明を適用し独自のプライバシー対策を実現している。
そして昨年12月、INGがデジタル資産のカストディ技術開発に取り組んでいることも報道された。ロイターによると、同行は「資産担保型とネイティブ・セキュリティ・トークンの両方で、デジタル資産関連のチャンスが増大していると見ている」とコメント。
INGのGDFへの参加はカストディ・サービス提供へ向けた次の一歩と考えられる。
カストディサービス提供の動き
昨年、米大手投資企業Fidelityのデジタル資産部門、並びにインターコンチネンタル取引所(ICE)の仮想通貨ブプラットフォームBakktもカストディ事業に乗り出した。
今年に入り、野村ホールディングズが、他2社と共同開発した金融機関向けのカストディサービス「Komainu(狛犬)」が、6月18日に始動した。
野村ホールディングズは、2018年5月に、カストディサービスの提供に向け、ウォレット企業のLedger社および投資顧問会社Global Advisors Holdings Limited(CoinSharesの親会社)と共同研究を開始すると発表。この研究がようやく実を結び、デジタル資産を対象としたカストディサービスの提供が開始された。
信頼性の高いカストディ・サービスの欠如が機関投資家による仮想通貨投資の障害となってきたと指摘されている中、世界金融大手の野村ホールディングスやINGのカストディ関連サービスへ参入は、業界にとって大きな追い風になり得る。
参考:GDF
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