DeFiの認知度と利用度のギャップを可視化する|CoinGecko Japan寄稿

Blockchain
coingecko_20200619

DeFiの認知度と利用度のギャップを可視化する

ここ1~2年で、DeFi(分散型金融)市場は大きく成長し、メディアがDeFiに関するニュースを取り上げる回数も増えています。ですが、実際にどれだけの人がDeFiを知っていて、かつDeFiサービスを利用しているのでしょうか。

本記事では、Coingeckoが独自に実施したアンケートデータを元に、数あるDeFiカテゴリ及びDeFiサービスの認知度と比較した実際の利用度、ユーザーの利用意思を明らかにしていきます。

要旨

  • DEX、ウォレット、分散レンディングが特に多くの認知を獲得。
  • DeFiサービスは認知度と実際の利用度の間に大きなギャップが存在する。
  • 利用度の低さは否めないが、回答者の大多数が”脱銀行”に前向き。

下図はCoingeckoが4月に公開した「CoinGecko四半期レポート for Q1 2020」の、各DeFiカテゴリの認知度に関するスライドです。カテゴリはDEX(74%)、ウォレット(73%)、分散レンディング(54%)、分散保険(9%)、その他(56%)のように分類されています。

やや一部の分野への集中が見られますが、DEXやウォレット、分散レンディングを中心に、DeFiの認知度の高さが伺えます。

続けて以下グラフは各DeFiサービスの認知度のランキングデータです。MetamaskはEthereum上で最も人気なウォレットサービスの一つで、利用用途はDeFiに限られません。そのため首位であるのも当然といえます。

次に、各DeFiカテゴリでの各サービスの認知度・利用度・利用意思の違いを見ていきましょう。下図はDeFiサービスの利用に用いられる人気のウォレットであるMetamaskとArgentの比較データです。

ArgentはDeFi内蔵ウォレットとしてメディアやユーザーから一定の注目を集めていました。しかしアンケート実施当時はクローズド版であったこともあり、認知度に対する利用度はMetamaskほど高くはありません。

※質問の内容
・Aware P3M = そのサービスを過去3ヶ月間で見聞きしたか
・Usage P3M = そのサービスを過去3ヶ月間で利用したか
・Intent 12M = そのサービスを今後12ヶ月で利用する意思はあるか

下図はDEXであるKyber Network・Unisawap・Bancor・dydxの比較です。Kyber及びUniswapは様々なDeFiサービスに対し流動性提供を行っており、広く利用されていることが分かります。

一方でBancorの認知度だけが突出して高い理由は、dydxなどと比較して古参プロジェクトである点や、2017年に大規模なICOを実施した点などが要因だと推測できます。

DEXにとって最大の課題は中央集権型取引所(CEX)に対抗することです。しかし現在DEXの中で取引ボリューム首位のUniswapですら、1日の取引ボリュームはBinanceの約170分の1程度しかありません。(※執筆当時2020/6/11)

下図は分散レンディングカテゴリのMaker・Compound・Instadapp・bZxの比較です。認知度の観点では、DeFiエコノミー内の主要ステーブルコインであるDAIを発行するMakerが圧倒しています。

ただしMakerの認知度に対する利用度・利用意思は、Compoundなどと比較して低いことが分かります。これは3月に起きた資産流失事件を要因としている為でしょう。セキュリティに関する話でいえば、bZxの利用度が異常に少ない要因も、2月に起きた攻撃及び資産流出を背景としていると考えられます。

その他のDeFiサービス群である、予測市場のAugurや保険分野のNexus Mutual及びopyn、ギャンブルのPool Together、決済のxDAI、バスケットプロトコルのSet、給与先払いのSablierのデータも見てみましょう。

これらのほとんどは比較的新しいサービスであるため、上述のKyberやMakerと比較すれば、認知度の低さ及び認知度に対する利用度・利用意思の低さはより顕著です。Augurが突出して認知度を獲得できているのは、Bancorと同様に古参かつICOプロジェクトであるためでしょう。

下図は上述のデータを元に、ブランド認知度(Brand Awareness)及び最近の利用(Recent Usage)という2つの指標を4象限データに変換したものです。Metamaskを除く全てのプロジェクトが、右下から右上の象限にかけて点々としていますが、これはつまり認知度の過剰な上昇を意味しています。

さて、ここまでDeFiサービスの実際の利用度の低さを明らかにしてきましたが、利用度の上昇を期待させるポジティブなデータもあります。驚くことに別のアンケートでは、「将来的に銀行の利用を完全にストップするか」という質問に対し、44%の回答者が「完全に止める」と回答しています。

今現在のDeFiの利用度の低さは課題であるものの、こちらのアンケート結果を見ると、既存の銀行システムに対する問題意識はある程度共有されていることが分かります。今後の長期的なDeFiサービスのパフォーマンス次第では、認知度に対する利用度のギャップを埋めていくことができるかもしれません。

(記事作成:CoinGecko Japan)

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

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