今回の記事は、「SBI R3 Japan」が公開しているMediumから転載したものです。
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Corda初の国内商用システム BCPostTradeに迫る! 前半
世界3大エンタープライズブロックチェーンといわれ、世界の金融機関で採用されるCorda。
今回はCordaを活用した初の国内事例である、『BCPostTrade』 -外国為替コンファメーション(照合作業)ソリューション- について特集していきたいと思います。
『BCPostTrade』を導入したSBIリクイディティマーケット株式会社から野口一也様、開発パートナーの株式会社シーエーシーから薮下智弘様のお二人にインタビューしてきました。
お二人には、
- BCPostTradeってなに?
- ブロックチェーンを使って、どんな良いことがあったの?
- ブロックチェーン基盤にはなぜCordaを選んだ?
- プロジェクトを進める中で感じた、ブロックチェーン/Cordaの課題とは?
- 企業のブロックチェーン活用は今後増えていく…?
といった疑問に答えていただきました!
インタビューアーは私、中澤が務めます
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中澤: BCPostTradeとはどんなシステムですか? (というか、そもそもSBIリクイディティマーケットは何をしている会社なんだろう、、、?)
野口さん:BCPostTradeはブロックチェーン基盤Cordaを使った、外国為替のコンファメーション作業を効率化するシステムです。
SBIリクイディティマーケット株式会社 野口一也
BCPostTrade導入プロジェクトをPMとしてけん引。 SBIグループ入社5年目。過去にはSBI FXトレード向けバニラオプションサービスの立ち上げや、TRMIを用いた相場予測モデルの検証に携わる。
2019年の夏ごろにプロジェクトが発足し、2020年4月から実運用しています。SBIリクイディティマーケットは、SBIグループの外国為替、デリバティブ取引といった外国為替関連事業を一手に担っています。弊社の大きな業務構成は注文、コンファメーション(照合)、決済となっていますが、BCPostTradeはコンファメーション業務にスコープしています。
従来のコンファメーション業務では電話やメールでの手作業に頼ったオペレーションだったため、情報の確認漏れやメールの誤送信といったオペレーショナルリスクが顕在化していました。本システムの活用によりSBIリクイディティ・マーケットでは、コンファメーション業務におけるオペレーショナルリスクを低減するとともに、ブロックチェーンソリューションのひとつである「Corda」を用いて、高いプライバシー保護と改竄耐性の確保を図ります。また、ブロックチェーンにより当事者間での取引データの同一性が保証され照合作業の信頼性が向上し、さらに情報伝達のリアルタイム化によりバックオフィス作業へのシームレスなデータ連携も可能になります。
今はコンファメーション機能のみを実装していますが、今後は注文や決済への機能拡充を行う予定です。将来的には為替以外の伝統的金融商品やデジタルアセットを扱う一元プラットフォーム化、そして参加企業を増やして業界スタンダードを目指していけたらと考えています。
中澤:ありがとうございます。会社のメイン業務のフローをブロックチェーンで改善したというところが日本においては非常に革新的な印象です。現在、注目を集めているのはこうした理由からだったんですね。
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中澤:システム開発に携わった薮下さんにご質問ですが、なぜブロックチェーン技術を採用することになったのでしょうか? 従来のシステムでは実現できない要件があったということでしょうか?
薮下さん:従来のRDBの仕組みでシステム構築した場合、1社が集中管理する事になり、今回のように直接取引関係の無い会社を含むネットワーク・システムの構築においては、データ改ざんや単一障害点が生じる事によるシステムの信頼性の面で解決出来ない問題が残ります。
株式会社シーエーシー 薮下智弘
デジタルソリューションビジネスユニット デジタルITプロダクト部 デジタルイノベーショングループ 新規事業・ブロックチェーン担当 15年以上に渡り、メガバンク、大手証券会社、大手保険会社のシステム開発アーキテクト、プロジェクトマネージャーとして従事。これまで、大手保険会社向けのブロックチェーンを用いたスマートコントラクト保険やメガバンク等でのトークンプラットフォーム開発等、複数の大手金融機関・事業会社向けにコンサルティング、研究開発等を行っている。
特に、外国為替のコンファメーションは複数社を跨ぐ業務で、取引相手として繋がる金融機関も徐々に増えていく事が想定されていた為、ブロックチェーンを使うことでセキュアにシームレスなシステム同士のリアルタイム連携を実現し、業務の効率化を図る事ができると考えます。
中澤:確かに単一のDBで全データを管理した場合に比べて、システム全体でみたときの信頼性、耐障害性を向上させることができることはブロックチェーンの強みと言えますね。
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中澤:BCPostTrade開発の基盤として、ブロックチェーンプラットフォーム『Corda』を採用していますが、この理由を教えてください。
野口さん:弊社内では、基盤比較の際に以下の図のように整理して検討しました。(一部抜粋)
野口さんからいただきました。
金融取引に求められる要件を備え、関係者取引を前提とした基盤である点を評価しました。
薮下さん:他のブロックチェーン基盤でもコストをかければ出来なくは無いですが、やり取りする個社間のみの最低限のデータ共有がプロトコルレベルでアーキテクチャとして実現されている点において、Cordaが最も自然体でプロジェクト要件を満たせていたと感じています。
開発については、弊社のこれまでの業務案件での開発経験においても、Cordaは比較的コーディングし易く、短期間で技術者育成出来る印象があります*。今回も短期間での開発でしたが、Cordaを使用することで、安定してスピーディーな実装・テストを実現できました。
*Cordaの開発言語はJava,Kotlinであり、イーサリアムのSolidityなどと比べると開発生産性が高く、かつ技術者育成コストが低い特徴がある
加えて、Notary**をtCN***が担う事で、(本システムの管理者すら改ざん出来ない)パブリック型ブロックチェーンのような改ざん耐性をプライベート型ブロックチェーンで実現できる事は、他のエンタープライズブロックチェーン基盤には無いネットワークインフラの為、使わない手は無いと今回実感しました。
**Corda上で二重支払いを防止する仕組み ***Corda Network Foundationが提供するthe Corda Networkのこと。 Notaryやアイデンティティ管理サービス、ネットワークマップサービスを提供するCorda Networkを、ネットワーク参加者のために運営してくれる。
また、RDBで構築した場合と比べると、RDBでは担保出来ないレベルの耐改ざん性の実現、コスト削減出来た部分が多く、そういった面でもブロックチェーンを活用した有用性が示せたと感じています。特に、Corda特有の利点として、tCNを活用したことで、独自に構築した場合と比較して開発のみならず、管理・運用コストを大幅に削減できたと考えています。
中澤:Cordaは今回のような金融機関のシステムを構築するうえで、エンドユーザーとベンダー双方にメリットがあるということですね。
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後半はこちら!
(記事作成:SBI R3 Japan/Riku Nakazawa)