ビットコイン先物SQの主な特徴について、元プロトレーダーが解説

Blockchain
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ビットコインの先物SQを解説

先物市場やオプション市場における「SQ」とは、Special Quotationの略称で、日本語では最終清算値、特別清算値などと言われます。

BTCの先物取引とは、将来の決められた期日(=満期日)におけるBTCを、予め決められた価格で売買することを約束する取引です。

例えば、「2021年6月20日時点で、2021年9月24日を満期日とするBTC先物を1BTC=35,000ドルで買う」という取引をした場合、前もって9/24におけるBTCを買う予約をした、という風に言い換えることができます。先物を新規で売り建てした場合も同様に「売りを予約した」と読みかえることができます。

受け渡しのある先物取引では、満期日が到来してなお反対売買してない市場参加者は、買い方は資金を用意し、売り方は現物を用意する必要がありますが、CMEのBTC先物は満期日に実際の受け渡しを伴わず、満期日を過ぎても反対売買されてないポジションは強制的に反対売買が行われ差金決済が行われます。

この差金決済時に使用される価格を特別(最終)清算値=SQといいます。実際のCMEの説明ではFinal Settlement Priceと言われていますが、同じ意味合いです。よって、BTC先物市場の参加者はSQまでに反対売買するか、最後まで反対売買せずにSQ値で最終決済するかのどちらかになります。

限月とは

限月(げんげつ)とは、先物取引の満期日が到来する月のことで、例えば6/25に期日を迎える限月を6月限(がつぎり)と呼びます。

現在、CMEのBTC先物市場では8限月が建っており、6月限の最終取引後は新たに10月限が建つ予定で、常に期近の6限月+期先の12月限2本が取引可能な限月の状態です。よって、毎月SQが算出されるわけですが、その中でも3,6,9,12月限は他限月と比較して注目度が高くなると思います。

理由は、株式市場などにおいても3,6,9,12月限は、クアドルプル・ウィッチング・デー とかメジャーSQといわれ、各種先物やオプションの満期日が重なることから、とりわけ重要な期日として意識されているからです。実際にオフショアのBTC先物市場において満期日のある取引限月は3,6,9,12月限となっています。

SQの影響は?

過去のSQ値がその後の価格変動に影響を与えるかどうかという観点では、個人的にはほぼないと思います。例えば、3月限のSQ値が50,000ドルだったとして、その後の相場が50,000ドルを節目に、上下で何かしらの新しい需給が発生するとは考えにくいからです。

しかし、各限月の最終取引日という意味では、SQ日に向けて反対売買に関する需給が発生し、相場の変動要因になることはあると思います。極端な例として、6月25日を最終取引日とする限月の市場参加者が2名であった場合を考えてみます。どちらも反対売買しかしないとすれば、先に反対売買したほうに価格は動きます。(例:買い方が先に反対売買すると価格が下がる方向に力が働く)。

では、2名のうち1名が、サヤ取引を専門に行う「アービトラージャー」や実需のヘッジであった場合はどうでしょう。

1名は単純に先物を買っている人。もう一人は先物(例えば6月限)を売り建てて現物を買っている人、もしくはマイナーなど事業会社のヘッジ売りなどであった場合です。

一概には言えませんが、SQが近づくにつれ先物価格は下がりやすいのではないかと思われます。理由は、買い方は6月限を転売して清算して終わるか、同時に9月限などの期先を新たに買い建ててロールオーバー(乗り換え)してくるとすると、価格全体に与える影響は、下方向かニュートラルかと言えるからです。

一方、売り方は、そもそもニュートラルなポジションなので先物を買い戻すと同時に現物を転売してくる可能性が高いと考えられます。以上のように、市場参加者の売り方買い方のバランスが極端な場合は、SQに向けて短期的な反対売買の需給が発生する可能性もありえると思います。

6月限は?

直近にSQを控えた2021年6月限はどうでしょうか。4月、5月に大幅なコンタンゴ(純鞘)を形成していたことを考慮すると、6月限にはアービトラージャーやマイナーのヘッジ売りが相応に居座っている可能性があり、オフショア市場の価格を見ても、現物や9月限と比較すると、6月限に売り圧力が強い傾向が見られます(現物価格や9月限に対して、6月限が安い鞘構造)。

6月限はオフショア市場のSQも重なるメジャーSQなので、先物市場全体でみた反対売買の需給も4月や5月よりは大きくなることが想定されます。SQ算出時間帯は、主に日本時間のAM9時(FTX)~翌26日AM0時(CME)と時間帯にばらつきはあるものの、これまでの相場環境と取組高を見る限り、25日にかけてそれなりの反対売買が活発化するという可能性はありそうです。

ただ、SQに絡んだ需給以外にも、現物や先物市場における新規投資家の売買動向にも相場自体が左右されうる事を考えると、現物市場も含めたBTCの取引市場において、25日まで売り優勢とは一概には言えないでしょう。特にETFや機関投資家、投資銀行の参入など暗号通貨市場を取り巻く環境は、ここ数か月でかなり大きく変わってきているため、単純に過去の傾向と比較しにくいと思います。

強いて言えば、機関投資家などが休日の土日などはSQがらみの需給をより反映しやすいのかもしれませんし、SQ算出日を超えると少なくともそれにからんだ反対売買の需給は発生しないので、相場的にはアク抜けすることも十分に考えられます。

「SQが相場に与える影響は分かりかねる」というのが正直な意見ですが、長期的な見通しや相場の大勢を見る上では、SQの影響は全くないと考えています。短期的な変動に右往左往するよりは、投資対象の本質的価値や将来価値はどこにあるのかという点を深堀することに注力する方が良いのではないかと思ったりもします。

 

寄稿者:つきらいん

先物(金、原油)の元プロップトレーダー。現在は日本の限界集落に居住し、年間330日農業に従事する専業農家。 現在のリサーチテーマは「ブロックチェーン技術と暗号通貨が、既存の社会経済の仕組みと金融市場をどのように変容させていくか」。趣味はウクレレとリサーチ。
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