方向感欠けるビットコイン、来週のFOMCで注目すべきテーマとは?

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今週の相場の動きは

今週のビットコイン(BTC)市場は、エルサルバドルでのBTCの法定通貨化やトランプ前米大統領のネガティブ発言など好材料・悪材料が入り乱れる形となった。価格も依然400万円前後を推移している。


目次
  1. 各市場の騰落率
  2. bitbank寄稿

各指標の騰落率一覧

6/11(金)終値時点の週間騰落率は、以下のようになった。

月初来騰落率

年初来騰落率

(今週の騰落率は、先週の終値、今週の終値を用いて計算。月初来、年初来についても前の月、年の終値で計算)

(仮想通貨の価格は取引所コインベースを参照、各銘柄の価格はTradingviewを参照)

6/5〜6/11のBTCチャート

bitbankアナリスト分析(寄稿:長谷川友哉)

今週(11日正午時点)のビットコイン(BTC)対円相場は、心理的節目の400万円を巡り方向感に欠ける展開。相場は先週から1時間足の200本移動平均線を挟み込む値動きとなっており、330万円から460万円のレンジ中盤での推移となっている。

先週末5日に幕を閉じたbitcoin 2021 Miamiでは、なんと言ってもエルサルバドルのブケレ大統領自らがビットコインを法定通貨に指定する意向を発表し話題を呼んだが、週明けからはトランプ前米大統領のネガティブ発言や、コロニアル・パイプラインのハッカーから米司法省と連邦捜査局がビットコインを奪還したことで「ネットワークがハックされた」という誤情報が出回ったことが売りを誘い、相場は400万円から保ち合い下放れとなり先月23日ぶりに340万円まで安値を広げた。

一方、対ドルで節目31,000ドル付近となる同水準からは自立反発の様相で切り返し、9日にはエルサルバドル議会でビットコインを法定通貨にする「ビットコイン法」が可決され、同法にビットコインに強制通用力を持たせる条項が盛り込まれたことや、エルサルバドルに感化された中南米諸国の複数政治家がビットコインに関心を表明したことが好感され、久方ぶりにビットコインが独歩高となった。

その後は、米・NY州で検討されている環境への影響を調査するためにマイニングを3年間停止させる法案から、再生可能エネルギーを利用したマイニングが除外されたことも相場の追い風となり、ビットコインは400万円を回復した。

ただ、翌10日には中国で主要マイニングハブとなる新疆と青海省でマイニングが禁止された事によるハッシュレートの低下が上値を抑えた。この日はバーゼル銀行監督委員会が、銀行が暗号資産(仮想通貨)を保有する際の最低自己資本要件を提案したことに反応して一時は420万円にタッチしたが、米市場でアルトコインやコインベース株が下落するのに連れ安となり、結局、400万円周辺の水準に押し返された。

第1図:BTC対円チャート(1時間足)出所:bitbank.ccより作成

今週の懸念材料であった米国の「CPI(消費者物価指数)サプライズ」は、市場が「物価上昇は一時的」という当局者らのこれまでの主張を織り込んでいたこともあり、予想通り5月のCPIは市場予想を上回ったが、米株市場でリスクオフは起きず、ビットコインは発表当初底堅い値動きを演じた。

エルサルバドルでビットコインが法定通貨になったことで少し活気が戻ってきたよう見えるかもしれないが、上述の通り、ビットコインの対円相場は安値圏でのレンジで取引されている。強弱材料が入り乱れる週となったこともあるが、「ハッシュレートに依然として低下余地が残されている」状況は、相場復調の大きな妨げになっている可能性が指摘される。

ビットコインは相場が下がり続けていてもハッシュレートは上昇基調を保つことができるが、その逆のパターンは珍しく、基本的にハッシュレートが下落基調の際や急落した際には相場も軟化しやすい(第2図)。

今年2月には内モンゴル自治区のマイニング禁止に向けた政策が発表され、これまでに新疆ウイグル自治区と青海省でもマイナーが締め出されることとなった訳だが、依然としてマイニングハブとして代表的な四川省と雲南省からは公式な発表がない。尚、現地の事情に詳しい情報筋によると、四川省のマイナーも先週時点で9月までの撤退準備をするよう通達を受けているらしいが、詳細は明らかではなく、ハッシュレートの不安定な推移はまだ続く可能性がある。仮に市場がこうしたことを織り込んでいるとすれば、必ずしも売り圧力にはつながらないかもしれないが、少なくとも新規のマネーフローには影響を与えるだろうと考えられる。

第2図:ビットコイン対円、ハッシュレートチャート 出所:bitbank.cc、glassnode.comより作成

さて、来週は目玉材料の米連邦公開市場委員会(FOMC)を15日〜16日に控えている。足元の米国の失業率がFOMCの年末目標から程遠いことに鑑みれば、政策据え置きの公算は高い一方で、注目されるのは、夏のジャクソンホールや来年2月に迫るパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の任期が着々と迫る中で、政策正常化に向けた地ならしを初めてくるか否かだろう。特にテーパリング開始時期の議論が具体性を帯びてくるかに注目したい。

 

寄稿者:長谷川友哉

英大学院修了後、金融機関出身者からなるベンチャーでFinTech業界と仮想通貨市場のアナリストとして従事。2019年よりビットバンク株式会社にてマーケットアナリスト。国内主要金融メディアへのコメント提供、海外メディアへの寄稿実績多数。
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