南米アルゼンチン、マイニング拠点として注目か
南米アルゼンチンがビットコイン(BTC)などの暗号資産(仮想通貨)マイニングの拠点として脚光を浴び始めていることがわかった。大手メディアブルームバーグが報じた。
アルゼンチンで仮想通貨マイニングを行った経歴を持つNicolas Bourbon氏によれば、法定通貨ペソ(ARS)のインフレ、安価な電力代、並びにアルゼンチン政府が電気代の助成金を支援していることから、マイナーの収益率は高い水準を保つことができているという。
アルゼンチンでは、度重なる経済危機や法廷通貨ペソの価値毀損(ディベースメント)などを背景に、ハイバーインフレへの対抗手段として仮想通貨関連事業が着目されてきた。
アルゼンチンの通貨インフレ
南アメリカに位置するアルゼンチンは、数年前から法定通貨のアルゼンチン・ペソ(ARS)のインフレや不況が続いており、昨年の新型コロナウイルスの感染拡大による経済的打撃が追い討ちをかけた。民主主義国家でありながら、コロンビアなどと並び国家インフレ率は世界的にも高い水準に苦しんでいる。
IMFの統計によれば、2020年のインフレ率は42%と2009年以降から大幅上昇。新興国の平均値である5.1%を大きく上回っている。
またこのような動きから、通貨のディベースメントを懸念する政府は外貨規制を強めており、アルゼンチン市民は月間200ドルまでしか海外通貨との交換が許されない。このような逆境において、仮想通貨マイニング事業者のインセンティブを掻き立てているようだ。
自国の法定通貨ペソ以外の資産需要は、マイナー以外でも高まっており、ブルームバーグの統計によれば、5月30日時点でペソ建のビットコイン取引は、公式レートの340万ペソを大きく上回る590万ペソに到達したという。
安価な電力コスト
また、アルゼンチンは元来コストが低い電力に加え、政府が有権者からの支持獲得を狙い、電気代の助成金を支援している。そのため、従来の電力コストは1kWhあたり0.06ドル(約6.6円)だが、補助金を計算すると1/3の0.02ドル(約2.2円)になる。
世界各国の電力コストを統計するGlobalPetrolPricesのデータによれば、補助金を含めたアルゼンチンの1kWhあたりの電力代はマイニングの一大拠点である中国をも下回ることが確認されている。(2020年9月時点)
電力以外の諸コストを考慮していないため一概には言えないが、南米も今後のマイニング拠点候補として挙げられる可能性もある。
5月下旬に、中国の副首相である劉鶴(りゅう かく)国務院副総理が中国国内における仮想通貨取引やマイニングの禁止令を示したことで、これまでビットコインマイニングの一大拠点だった中国では、取り締まりを懸念した仮想通貨事業者の撤退動向も散見される。
短期的にはハッシュレートの低下などが危惧されるものの、中長期的にはビットコイン採掘の分散化につながるなどのメリットも考えられるため、移転先候補にも注目が集まっている。
Bitfarmsの南米進出
実際、アルゼンチンの安価な電力代は、すでに一部の採掘業者の目に留まっているとされる。
カナダに本拠を構える米ナスダック上場企業のBitfarmsは今年4月、南米アルゼンチンにて、大規模なビットコインマイニングを可能にするデータセンターの設立を発表した。
2022年の完成を目処に、公益事業レベルの民間発電事業者と8年契約を締結。最大210メガワット(MW)規模の電力を受け取ることが可能とされる。
Bitfarmsは5月上旬にナスダックグローバル・マーケットへの上場申請が認められたことを発表したばかり。これまでマイニング企業へのナスダック上場はあったが、グローバルマーケットへの上場は初の事例だ。
同社は、2017年からカナダのケベック州に5つのマイニング拠点を置き、100%水力発電で稼働してきた。アルゼンチンのマイニング拠点では相当数の古いマイニング機器を利用する予定としており、「安価な電力を利用することで経済的な寿命を伸ばすことができる」と説明している。
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