銀行とフィンテック企業の提携
米連邦預金保険公社(FDIC)のJelena McWilliams会長は、法曹界を中心に6万人のメンバーから構成されるフェデラリスト・ソサエティ(the Federalist Society)主催のイベントで講演し、コロナ後の金融規制においては、「イノベーションを阻害しないアプローチ」が非常に重要だと語った。
McWilliams氏は、コロナ禍による急激な社会的変化を目の当たりにし、イノベーションの重要性を再認識したという。
同氏は会長就任以来、FDICの最優先事項として、イノベーションを阻害するのではなく、促進する規制システムの構築に取り組んできたと強調。「必要は発明の母」の格言通り、FDIC内に銀行セクターで革新技術の普及を推進する「FDiTech」設置。その活動の柱の一つに「銀行とフィンテック企業の提携」をあげた。
銀行を規制する立場にあるFDICだが、McWilliams氏は、「金融セクターとの協業を通して、変革の先頭に立つことがFDICの目標だ」と述べている。安全なシステムを維持しつつ、イノベーションを促進するためには、どのような政策の改正が必要かに注目しているという。
米国の国際競争力低下の懸念
McWilliams氏は「銀行は生き残るために革新しなくてはならない」と強調した。もし、リスク回避を優先するがあまり、革新技術を取り入れず金融システムの変化を抑圧するならば、「アメリカは人々の生活を向上させるアイディアを実現することのできない国になる」と危機感を表明した。
そして、米国で企業家精神を開花させることがなければ、他の国で企業家精神が開花することになると述べ、一つの例として、中国政府が開発するデジタル人民元の例をあげた。
「デジタル人民元は、単に中国国内の試みではなく、国際的に拡大する可能性がある」
McWilliams氏によると、最終的にはデジタル人民元のユーザーは10億人のに達するとの試算もあるという。その場合、米ドル基盤のシステムだけではなく、米国による経済制裁も回避することができるようになると警鐘を鳴らした。
デジタル資産の動向に注目
急速に技術が進歩する中で、規制当局が抱える課題は多いが、McWilliams氏は次のような例を取り上げた。
- フィンテック企業と銀行が協力できる環境を整えること
- 顧客ために、革新的なソリューションを追求できるスペースと機会を銀行に与えること
さらに、銀行はデジタル資産(≒仮想通貨)についても検討を始めていると指摘。FDICとしても、この動きに注目しており、銀行がどのようなことについて検討しているのか、またFDICが、この分野で果たすべき役割は何かについて、銀行に情報提供を求める予定だと述べた。
仮想通貨業界に歩み寄る動き
米国で金融イノベーションとしての仮想通貨に注目し、既存の金融業界との橋渡しに大きな影響を与えたのは通貨監督庁(OCC)だろう。OCC前長官代行のBrian Brooks氏(現Binance USのCEO)は、任期中に、仮想通貨の保管やステーブルコイン利用に関するガイダンスを発表し、銀行が準拠するべき指針を示した。
また、米ワイオミング州では、仮想通貨を取り扱うフィンテック企業が新たに特別枠で銀行資格を取得すること(特別目的預託機関)も可能で、この制度を利用して「Kraken Bank」と「Avanti」が同州で設立されている。
伝統的な金融機関が仮想通貨に歩み寄る動きも出てきたようだ。
米CNBCの報道によると、米国では、既存の銀行口座でビットコイン(BTC)を売買・保有が可能になるサービスの提供が進められていると言う。早ければ、中小の銀行を中心に、2021年内にも実現する可能性があると言う。
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