Taproot、シグナリング開始
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の大型アップグレード「Taproot」が、実装に向けて一歩前進した。
Taprootのアクティベーション・コードを含んだ、ネットワークの基盤となるソフトウェア「ビットコインコア(Bitcoin Core)」の最新バージョン(0.21.1)が1日、リリースされた。BTCマイナーは、この最新バージョンにアップデートし、採掘するブロックに「シグナルビット(signal bit)」と呼ばれる特定のデータを含めることで、Taproot実装への支持を表明できる。
ビットコインのような分散化型ネットワークの合意形成には、非常に長い時間がかかるのが常だが、今回は3か月間という上限を設定したSpeedy Trial(迅速なテスト)を実施し、マイナーのTaproot支持率を測る。
期間中にビットコインのハッシュレートの90%を占めるマイナーが最新バージョンへアップデートした場合、Taprootは「ロックイン」され、ブロック高709,632時点(今年11月頃)にネットワークへの本格的な実装が開始する。
一方、3ヶ月以内にマイナーの支持率が90%に達しなかった場合、Taprootをアクティベートする他の方法が実施されるが、8月中旬頃には、ロックインからアップグレードに移行するのか否かの答えが出る予定だ。
現在、Taprootをアクティベートしているのは、F2Pool(ハッシュレートのシェア:16.82%)、FoundryUSA(5%)とSlushPool(3.64%)で、支持を表すシグナルが含まれたブロックの割合は10%。アクティベーションの状況はTaproot activationから確認できる。
待望のアップデート:Taproot
TaprootはSegWitが実装されて以来の、大型アップデートとなる。取引に署名するための暗号技術であるシュノア署名と、スマートコントラクト機能を強化するMAST(Merkelized Abstract Syntax Tree=マークル化抽象構文木)の利点を融合するソリューションで、ネットワークのプライバシー機能を高めるとともに、処理速度の向上が期待される。
プライバシーの面では、ブロックチェーン上における様々なトランザクション(スマートコントラクト含む)の見え方を均一にし、区別できなくなるため、匿名性が向上。また、署名に関しても、単独の受信者のトランザクションの署名をまとめることが可能になるため、ブロック内のデータサイズを縮小、ネットワーク全体のスケーラビリティの改善につながるとされてきた。
さらに、マルチシグの利用促進効果から、セキュリティ向上につながるとの指摘もある。
ビットコインネットワークのノードにとっても、一つのデジタル署名を検証するだけで済むようになるため、ノード運営の負担が軽減される。さらに、シュノア署名の機能によりブロック内の全ての署名を追加し、一度に検証することも可能になり、検証の最適化にもつながるなどの利点がある。
このような効率化により、マルチシグの利用コストの低下や、ビットコインのセカンドレイヤーソリューションである、ライトニングネットワークの利用コストが低下する可能性も高いと期待されている。
価値の保存手段として、関心を持たれるビットコインだが、Taprootの実装後は、価値の交換である決済面でも、大幅な機能向上が期待される。
マイナーによるTaprootの採用率が90%という域値を超えるのか、今後の動きを見守っていきたい。
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