CBDCには国際的な共通ルールを
日本銀行の神山一成決済機構局長は8日、中央銀行が発行するデジタル通貨(CBDC)について、国際的な利用に関しては、よく似た国と共通のルールを考えていく方が良いと主張した。神山局長にインタビューを行なったロイターが報じた。
先進国と新興国でCBDCのあり方が異なる可能性があると指摘。日銀は国際標準を設ける重要性を様々な会議で主張しているという。神山局長は「特に国際的な利用については、同時並行でさらに広範な国を念頭に標準化に取り組むことを意識しないといけないかもしれない」との見解も示した。
日銀は現在もCBDCを発行する計画はないというスタンスを変えていないが、需要が高まった場合に備えて5日に実証実験を開始した。3段階に分けて進められる実証実験の「フェーズ1」では、発行や送金等の基本機能を検証。フェーズ1は2022年3月まで行われる予定で、神山局長は今回のインタビューで「周辺機能を検証するフェーズ2に入るのは来年度になる」と説明した。
神山局長は今回、国際的な利用について語ったが、CBDCはまず国内の決済の利便性を高めることが重要だと述べている。その先に他国間との利用も考えられるようになると話した。
国内ではすでに民間の決済サービスが存在しているが、このことについては「CBDCが民間ビジネスに与え得る影響は、今後の検討において重要な論点だ」と指摘。「民間の決済サービスが共存・補完し合うように、日本の決済システムの安定性や効率性が高まるようにしていかなければならない」とした。
CBDCを発行した場合、フィンテック企業が日銀と消費者をつなぐ仲介機関になる可能性については、「仲介機関の範囲や数をどうするかは、まさに制度設計の根幹。日本の決済システムに大きな影響を与えることになるため、幅広い関係者の意見を聞きながら判断していく」と語っている。
中国も国際ルールを提案
日本や米国がCBDCの発行に慎重な姿勢を示す一方、主要国では中国のデジタル人民元が大きく開発で先行している。
中国人民銀行(=中央銀行)デジタル通貨研究所のMu Changchun所長も、国際的なルールを定めることを提案しており、「ある法域の通貨主権や金融安定性を保つことが、CBDCを発行する理由の1つ。ある国の発行するCBDCが他の国のCBDCを妨げることがあってはならない」との見解を示している。
この点については、主要国の中で最もプロジェクトが進んでいる中国が国際的なルール作りを主導する思惑もあるとして、警戒する声も上がっている現状がある。
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