CBDCの実証実験へ
日銀が主導して開発を進めるCBDC(中央銀行デジタル通貨)について、この春から実証実験が開始されることが分かった。(NHK等報道)
2020年7月に実証実験を行う方針を表明してから、日銀決済機構局長の神山一成氏は「実証実験は2021年度の早期に開始できるように取り組む」としてきたが、この春に開始される予定が明らかになった。
尚、日銀は現時点でCBDCを発行する予定はないとする立場を変えていない。
実証実験の第一段階
日銀は今回の実証実験を第一段階として位置付けており、民間企業と連携していくとしている。
内容としては、取引履歴を記録するための台帳をシステム上に構築するなどし、デジタル通貨の発行・流通における基本機能を確認していくというもの。第一段階は一年ほどの時間をかけて行われ、その結果を踏まえたうえで、次の実現可能性を検証する第二段階に移行する構えだ。
日銀は2020年7月に実証実験を行う方針を明らかにし、具体的な計画について研究チームがまとめたレポートを発表した。
レポートでは、CBDCは現金と同等の機能を備える必要があると説明。要件は「誰もがいつでもどこでも、安全で確実に利用できる決済手段」とされている。現在のデジタル決済ではスマートフォンを介した支払いが多いが、子どもや高齢者などは利用が難しいため、あらゆる人が利用可能な端末が必要だという課題を指摘している。
導入には数年かかるか
2020年11月、日銀元決済機構局長の山岡浩巳氏は、CBDCの導入には様々な課題があるため日本が発行する場合、準備に数年かかるとの見解を示していた。
山岡氏は課題の1つとして、民間銀行の預金から多額が出金される可能性があると指摘。その上で、「デジタル円」を実現するには発行する前に様々な課題の対策を講じる必要があると述べていた。
日銀の神山氏も実際に導入するには、非常に高度な判断が必要になるとの見方を示しており、発行の難易度が課題となっている。
中国が世界を牽引
国際決済銀行(BIS)は今年1月、仮想通貨やCBDCについて、各中央銀行を対象に行った調査結果を発表。
日本・米国・中国を含む66の中央銀行が回答した報告によると、そのうちの80%の中央銀行がCBDCのプロジェクトに取り組んでいる。又全体の40%はリサーチから実験や概念実証に進んでおり、10%がパイロット的なプロジェクトが完成していることがわかった。
近年は世界各国の中央銀行の多くがCBDCの開発・研究に取り組んでおり、議論も盛り上がりを見せている。特に中国は世界でも一歩リードしており、デジタル人民元(DCEP)を開発。昨年から深センなど、中国の各都市でデジタル人民元の実証実験を既に4度も行ってきた。
また2月初旬に行われた実証実験では、中国工商銀行(ICBC)が、北京の2つの支店で8台のデジタル人民元ATMを設置。また、カードベースの高度な指紋認証付きハードウェアウォレットも使用されている。