デジタル人民元のATMが登場
中国の首都・北京で、デジタル人民元を民間人に配布する実証実験が行われ、デジタル人民元を処理するATMが登場していたことが分かった。また、カードベースのハードウェアウォレットも使用された。
2月初旬の旧正月に、北京で150万ドル(約1.5億円)規模のデジタル人民元テストが行われた。デジタル人民元は、中国政府が開発する中銀発行デジタル通貨(CBDC)である。
テストの一環として、中国工商銀行(ICBC)は、北京の2つの支店で8台のデジタル人民元ATMを設置し、支店にはe―CNY(電子人民元)のアイコンで目印が付けられた。
この機能は、中国がデジタル通貨/電子決済システム(DCEP)システムの正式な立ち上げに先立って構築するインフラの不可欠な部分となる。
地元メディア「Financial News」はデジタル人民元と現金の交換がどのように行われるのかビデオクリップを掲載した。
動画によると、ATMは「デジタル取引」と呼ばれる機能を備えている。この機能を選択することで、ユーザーは現金をデジタル人民元に変換するか、その反対を行うかを選択できる。
現金を預けるには、ユーザーが最初にデジタル人民元ウォレットを有効化するために使用した電話番号を入力する必要がある。その後、数秒でユーザーのモバイルウォレットにデジタル人民元が入金されるという。
デジタル人民元を現金に変換する際は、ウォレットアプリを使用してATM画面でQRコードをスキャンし、引き出したい現金額を入力することで可能になる。数秒後、出納機から入力された現金が引き出される。
デジタル人民元のハードウェアウォレット
深センや蘇州で実施された以前のテストでは見られなかった新機能として、北京のテストでは、デジタル人民元のハードウェアウォレットを使用するオプションも登場。通常のウォレットに加えて、指紋認証付きの高度なウォレットも用意されていた。
ハードウェアウォレットは従来の財布と同じように、紛失したり盗まれたりするリスクがある。しかし携帯電話やデジタルアプリなどを使い慣れていない高齢者やその他の人々にも簡単に使えるという。
現地メディアによると、中国郵政儲蓄銀行は、カード型ウォレットの高度なバージョンとして、指紋認証を備えたカードウォレットをリリースした。このカードは、指紋が登録されているカード所有者だけが決済利用できるようになっており、安全性が高まる。
地域・機能共に拡大していくデジタル人民元テスト
昨年から様々な中国の都市で、市民がデジタル人民元でショッピングを行う大規模な実証実験が行われてきた。
深センや蘇州でも大規模テストが行われており、回を経るごとに新たな試みがなされている。
実店舗だけではなくオンライン店舗にも決済が拡大され、蘇州のテストではエンタメ企業Bilibili、配車サービスのDidiなどでもDCEPにより支払うことが可能となり、オフライン決済も導入された。
今年1月にオンラインで開催されたダボス会議では、中国国立金融研究所の朱民所長が登壇し、デジタル人民元について語っている。
デジタル人民元にとってはセキュリティと安定性が最も重要になるとして、慎重にシステムをテストしていく必要性を強調。今後も実証実験の数を増やしていく予定だと説明した。
今後、海南・青島・大連・西安などの場所でも、さらにデジタル人民元がテストされるという予測もあり、地域や採用シナリオがさらに拡大する見込みだ。
フィンテックの専門家Su Xiaorui氏は、デジタル人民元のテストは、オンラインの使用シナリオをより拡大していくと述べる。
デジタル人民元は、旅行、eコマースなど小売シナリオに徐々に浸透し、将来は、企業貿易やサプライチェーンファイナンスなどの方向でも機能することが期待されているという。
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