「中央銀行デジタル通貨の方が優れている」
国際決済銀行(BIS)のゼネラルマネージャーAgustin Carstens氏が、ビットコイン(BTC)投資はリスクが高く、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の方が、はるかに優れたデジタルマネーであると発言したことが分かった。ブルームバーグが報じた。
またCarstens氏は、公共政策シンクタンクHoover Institutionにおけるスピーチで、暗号資産(仮想通貨)ビットコインが最大供給量の2,100万コインに近づくにつれ攻撃に対して脆弱になると述べたと伝えられている。
採掘されるコインが少なくなるにつれ、ビットコインマイナーの数も減少し、ネットワーク攻撃のリスクが高まるといった意見だ。
さらに、Carstensは、ビットコインのマイニングは大量に電力を消費する「悲しい副作用」を持っているとも指摘。
これらのことにより、デジタル通貨が存在していくなら、中央銀行が中心的な役割を果たして、価値の安定性を保証し、デジタル通貨の総供給の柔軟性を確保し、システムの全体的なセキュリティを監視する必要があるという。
Carstens氏は「デジタル通貨が必要な場合、中央銀行がそれらを発行しなくてはいけない」と発言したとも伝えられる。
ビットコインへの「51%攻撃」は起こりにくいとの反論も
Carstens氏が挙げた「51%攻撃」や「マイニングによる電力消費」の問題については、これまでも様々な識者が検討しており、反論もされているところだ。
51%攻撃について、仮想通貨カストディサービス企業Casaの創設者Jameson Lopp氏は、ビットコインで51%攻撃のリスクは現実的ではないと論じている。51%攻撃は、ひとつのノードがネットワーク全体の計算能力の過半数を超えた場合に、不正取引の正当化や、正当な取引の拒否などが可能とされている攻撃で、比較的小規模なネットワークで発生している。
Lopp氏によると、51%攻撃発生後もネットワークのコンセンサス・ルールは守られ、それを変更することも出来ないため、実際に出来ることには制限があるという。
さらに、攻撃者が、ビットコインの二重支払いに成功したケースでも、そのコインを現金化する上では複雑な手続きが必要で、仮想通貨取引所には引き出し限度額やAML / KYC(資金洗浄対策/身元確認ルール)が設けられているためハードルが極めて高いと指摘。
また同氏はコインデスクに対して「誰かがビットコイン攻撃のために必要なハードウェアを取得するには、それだけで多額の先行投資が必要になる」とも語っている。ビットコインよりもはるかに優れたネットワークが登場して価値を持った後でのみ、ビットコインへの51%攻撃は合理的になるとした。
再生エネルギーの活用増えるマイニング
マイニングに使用する電力について、仮想通貨投資会社Coinsharesの2019年のレポートは、ビットコインネットワークの電力に使用される電力の73%が再生可能エネルギー源であり、その3分の2が中国にあると推定している。中国は豊富な水力発電によるマイニング工場で知られている。
一方で結果には機関によりばらつきもあり、2018年のケンブリッジ大学による調査では、マイニングに占める再生可能エネルギーの利用率は推定28%だった。
調査対象となるマイニングファームの範囲や、電力価格変動などが偏差に影響していると見られている。
しかしどちらの調査からも、仮想通貨マイニングの一定割合を再生可能エネルギーが占めていることが分かる結果だ。
また米国のテキサス州やロシア、ノルウェーなどでも再生エネルギーを使ったマイニングが行われており、持続可能性が重視されつつある社会状況の中、さらにこうした方向性が拡大する可能性もある。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用