仮想通貨市場とビットコイン動向
20日の暗号資産(仮想通貨)市場。 ビットコイン(BTC)価格は、前日比2.54%安の373万円(35,900ドル)とレンジ内で推移する。
下値は買われているが上値も重く、ドミナンス(市場シェア)も低下傾向にあるため、勢いのあるアルトコインに資金を吸われやすい傾向にある。
4万ドル上を抜けた場合は再び上値追いも期待できるが、底割れた場合は下落トレンド転換から過熱気味の仮想通貨全面安などのシナリオもあり得る。中長期の強気トレンドの渦中にあることは自明であるものの、このような調整局面は決して楽観視できない。
イーサリアムが最高値更新
時価総額2位のイーサリアムが、18年1月に記録した過去最高値1420ドル(米コインベース)を上回った。
【価格アラート】
時価総額2位の仮想通貨イーサリアム(ETH)価格が高騰し、約3年ぶりに過去最高値を更新した。
現物価格で1420ドル(約15万円)を上回った。■関連記事
イーサアリアム高騰の背景https://t.co/oiCDqZUpPa pic.twitter.com/gk7CEa6ach— CoinPost -仮想通貨情報サイト-【iOS版アプリリリース】 (@coin_post) January 19, 2021
その後、節目での利益確定に押され、急騰の反動で売りが先行している。新高値更新した場合の上値余地は大きいが、ボラティリティ(価格変動性)の上昇には留意したい。
Ryan Watkins(@RyanWatkins_)氏は、イーサリアムのトランザクション数が放物線上に上昇していると指摘。1日あたり120億ドルの決済は、ビットコインを30億ドル上回ると指摘した。
Ethereum’s daily transaction volume is going parabolic.
It now settles $12 billion in transactions daily – $3 billion more than Bitcoin.
Imagine not being bullish $ETH. pic.twitter.com/3NfOz1ruiM
— Ryan Watkins (@RyanWatkins_) January 19, 2021
一方、さらに次のステージに向かうためには、さまざまな課題も残る。
イーサリアム価格高騰をけん引するDeFi(分散型金融)セクターの急成長に伴い、デジタルアセット送信時のネットワーク手数料(取引コスト)を示す「ガス代」が歴史的に最も高い水準まで高騰しており、dApps(分散型アプリ)市場などに多大な影響を及ぼしている現状も否めないからだ。
現在、イーサリアムにおける全トランザクションの99%が、DeFiアクティビティに関連しているとされ、異なるスマートコントラクト間でETHを移動する単純トランザクションは、ウォレット間のETH転送よりも約10倍高く付くとの試算もある。
このような問題を解決するため、共同創設者のブテリン氏とコア開発者のEricConner氏によって改善提案がなされた「EthereumImprovement Proposal(EIP-1159)」を実装する。イーサリアムのスケーラビリティ問題、及びガス代のgwei価格設定メカニズムの非効率性を修正することを目指すものだ。
なお19日には、イーサリアム1.0(現行版)の次期アップグレード「ベルリン」に関する改善案のドラフトが公開された。Githubへの公式投稿よると、ベルリンでは、5つの改善案(EIP)が提案されている。詳細は、以下。
Draft for the Berlin Network Upgrade / Hardfork Specification. 👇👇👇https://t.co/JHamdR9tTp
Follow here for canonical information about the upcoming Ethereum upgrade. Includes all included EIPs and a readiness checklist. 🎉
Looking for Feedback!
— James Hancock 🏗 (@JHancock) January 19, 2021
ステーキング報酬の仕組み
イーサリアムは、合意形成アルゴリズムであるプルーフオブワーク(PoW)からプルーフオブステーク(PoS)への歴史的転換点を迎えるにあたり、トランザクションの検証に関する暗号経済的インセンティブが大幅に変化することになる。
20年11月には、次世代イーサリアム2.0のメインネットであるビーコンチェーンか稼働した。ネットワークの安全性を確保するため、起動条件には、バリデーターの条件である「32ETH(1/20時点で500万円相当)のデポジット参加者」が16,384(52万4288ETH相当)に達することが定められていた。
ETH保有者は「ステーキング」により、ネットワークを安全に維持するための貢献に対して報酬を受け取ることができるため、株式の配当のようなインカムゲインを得ることができる性質を有する(*厳密には異なる)ことが、イーサリアム現物の中・長期保有につながる側面がある。
今後のアップグレードでスケーラビリティ問題の解消へ動いており、DeFiに関わるソリューション開発が進めば、イーサリアムを使用したDeFi期待もさらに上昇し得るだろう。
ステーキング報酬は、ビットコインのマイナー(採掘者)に相当するバリデーター間で均等に分割される。バリデーターのネットワークのサイズが大きくなるにつれ、ネットワークの堅牢性が高まる一方、報酬期待値は低下する仕組みだ。
上図を確認すると、稼働当初の最高APR(Annual Percentage Rate:年利)21.6%から、1月20日現在は9.5%まで落ち着いているものの、株式の配当利回りと比較すると高い利回りが得られる計算となる。当然、仮想通貨特有のリスクも考慮する必要があり、以下の記事で解説している。
また、注意点として、デポジットコントラクトに預けたETHによる「ステーキング報酬」は、ネットワークの拡張にあたるフェーズ1.5の「シャードチェーン」実装までシステム上引き出すことができない。
イーサリアムの開発ロードマップ
次世代イーサリアムにあたるETH2.0は、4つのフェーズに別けられ開発されている。
現物ETHの大量デポジットによる需給面の大幅良化に加え、本稼働を目指すシャードチェーンのローンチを控え、市場の思惑がイーサリアム価格を押し上げているものとみられる。
- フェーズ0:2020年(バリデータを管理する「ビーコンチェーン/Beacon Chain」実装)
- フェーズ1:2021年(ユーザーが利用する「シャードチェーン/Shard Chain」実装)
- フェーズ1.5:2021年(シャードチェーン・メインネット稼働、PoS移行)
- フェーズ2:2021年〜(シャードチェーンの全稼働)
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用