「バリュー投資家」として仮想通貨に懐疑的姿勢
米国の著名投資家で億万長者のHoward Marks氏が、オークツリー・キャピタルの顧客宛レターで、暗号資産(仮想通貨)についても言及、彼の息子Andrewが相当量のビットコインを保有していることを明かした。
ただ、Howard Marks氏自体はまだ仮想通貨に対する懐疑的な立場を維持しており、仮想通貨についてAndrew氏から学んでいるところだという。
懐疑的立場を取ってきた理由を説明しつつ、急速に変化する現代では新たなものについての学習も大事だとする。
Mark氏によると、同じく投資家であるAndrew氏はビットコインやその他の仮想通貨について前向きな見解を持っており「ありがたいことに一家のため意味ある金額を所有」している。仮想通貨に懐疑的な姿勢を保ってきたMark氏とはしばしば議論になるという。
その上で、Marks氏は自分を「バリュー投資家」と位置付け、「バリュー投資」を「あるものが本質的にどのような価値を持っているかを、主に基礎的なキャッシュフローを生み出す能力に基づいて定量化し、その市場価格がその価値に比べて割安である場合に購入すること」と説明。
バリュー投資家の自然な状態の一つは懐疑論であるという。投機的熱狂が起こったがその後暴落した事例を思い起こし疑いを持つ姿勢により、バリュー投資家は財産を失う可能性を減らせるとする。
「イノベーションが急速に起こる現代では新たな考え方も必要」
一方で、Marks氏はこの懐疑論について、次のように留保もつけた。
しかし、非常に多くのイノベーションが急速に起こっている世界では、この考え方(懐疑論)は、強い好奇心、新しいアイデアへの開放性、および意見を形成する前に学ぶ意欲と組み合わせる必要がある。[中略]イノベーションが機能するとき、最初はクレイジーに見えたものに、多くの人のコンセンサスが得られるのは後になってからのことだ。
変化の激しい現代では、何が起こっているのかを学習しようとしなければ、懐疑論が正当化できないとした格好だ。
そして、仮想通貨に対する自らの姿勢については次のように述べている。
仮想通貨の場合、おそらく私は元々の保守主義と、金融イノベーションと投機的な市場行動に関する経験的なパターン認識により、懐疑的な立場を取ることにした。このおかげで、オークツリーと私は何度もトラブルを避けることができたが、イノベーションについて考えるのにはおそらく役立たないだろう。
つまり、仮想通貨へは過去の様々なバブルを見てきた経験から懐疑的立場を取っているが、仮想通貨それ自体について学んだ上での判断ではなかったことが窺える。
Marks氏は、「仮想通貨について確固たる見解を形成するのに十分な情報をまだ得られていない」と結論し、オープンマインドな精神で、これから学んでいくと結んだ。
現在はまだ懐疑的立場を崩していないと思われ、将来意見を変えるかも不明だが、少なくとも仮想通貨をもっと知ろうという姿勢を見せている。
ボラティリティ(価格変動)の大きさが参入障壁
最近のフィナンシャル・タイムズの報道によると、メインストリームの投資家の間では仮想通貨の高いボラティリティが参入障壁となっているという。
資産運用企業「UBSアセット・マネジメント」のストラテジストは「高いボラティリティや過去の価格の下落幅を考慮すると、投機目的の投資家にとっては仮想通貨は魅力的な資産である。しかし安全資産やポートフォリオを多様化するための資産には適していないというのが我々の考えだ」と述べた。
一方で、ビットコイン市場へ参入する機関投資家も続いている。
著名投資家ポール・チューダー・ジョーンズ氏のファンド、世界金融大手フィデリティ傘下の仮想通貨関連企業Fidelity Digital Assets(FDA)などが仮想通貨分野に参入している。また決済大手ペイパルはまず米国から仮想通貨取引サービスを開始。
MicroStragtegyはじめ、財務資産としてビットコインを保有する企業も登場している。
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