前回を上回る規模の実証実験
中国・上海に隣接する蘇州市で、デジタル人民元(DCEP)の大規模な実証実験が始まった。深セン市でのテストに引き続き2度目となる今回は、新たにオンラインショッピング・プラットフォームでのDCEP決済も導入された。
中国メディアのグローバルタイムスによると、中国のeコマース大手JD.comでは、11日20時からの24時間で、約2万件のDCEP決済が行われたという。
JD.comのフィンテック部門JD Digitsによると、プラットフォームでの最初のDCEP決済は、支払い完了まで約0.5秒の高速決済が実現した。デジタル人民元取引の80%近くが若い世代(80年〜90年代以降の世代)によって行われた。
今回のテストでは、計2000万元(約3億円)分のデジタル人民元が抽選で蘇州市民10万人に配布された。1人あたり200元(約3,000円)となる。
深セン市でのテストでは、地元の小売店でのDCEP決済利用に制限されていたが、今回はオンライン店舗にも拡大され、JD.comの他にも、商取引プラットフォームMeituan、エンタメ企業Bilibili、配車サービスのDidiなどでもDCEPにより支払うことが可能となる。
蘇州市でのテストはオフライン決済も導入され、参加人数や店舗数、金額などの面でも前回を大幅に上回る規模となっている。
「デジタル人民元の本格ローンチは2023年頃か」
上海とヨーロッパを拠点として、デジタル金融についてアドバイスを提供する団体「デジタルルネサンス財団」のマネージングディレクターCao Yin氏は、中国は積極的かつ慎重にテストを行っていると意見した。
その性質上、一度発行してしまえば、何か問題が起こった時にユーザーからデジタル人民元を取り返したり、禁止することは難しいと指摘。敵対する国からの攻撃にさらされるリスクもあると指摘した。
Cao Yin氏は、中国が2023年頃に大規模にデジタル人民元を実装する可能性があると予測して次のように語った。
米国のような国は、中国の実験結果から学び、リスクを回避しようとしている。大きく先行する中国の競争者はほぼ居ないため、発行を急ぐ必要はない。
米国はデジタルドル発行に慎重姿勢
一方米国では、中銀発行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルドルの発行を推奨する議員も存在するものの、政府側は慎重な姿勢を崩していない。
連邦準備理事会(FRB)副議長は11月、米下院の金融サービス委員会で「CBDCが米国にとって必要だと判断するのは時期尚早」だとした。現在は、発行の必要性を見極めるため、試験的なプロジェクトを行なっている段階だと説明している。
またPowell議長も11月には、素早く発行することよりも、正しい方法を見出すことの方が重要だと主張、米ドルは世界の基軸通貨であることもあり、リスクもしっかり見極める必要があると発言した。
米国ではドルのデジタル化を支援する非営利団体「デジタルドル財団」と、コンサル大手のアクセンチュア社が「デジタルドルプロジェクト」を進めており、米ドルをデジタル化することで、金融取引の時間の短縮、低コストでの取引、米ドルの利用拡大などの実現が目指せるとしている。
デジタルドル財団は、米商品先物取引委員会(CFTC)の前委員長や元最高技術革新責任者らが設立した組織だ。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用