ハッシュレートを上げて51%攻撃を防ぐアップグレード
暗号資産(仮想通貨)イーサリアムクラシック(ETC)のブロックチェーンで、2020年11月29日前後にブロック番号11,700,000において「Thanos」という名前のアップグレードが実施される予定。
ネットワーク全体のハッシュレートを上げて、さらなる51%攻撃を予防するのが目的だという。
このアップグレードにより、3GB(ギガバイト)および4GBのGPUシステムを使用するマイナーがETCのマイニングを再開できるようになる。ハッシュレート上昇によりセキュリティが強化され、より分散された健全なマイニングエコシステムが促進される見込み。
従来のGPUデバイスでマイニング継続可能に
イーサリアムクラシックのマイニングアルゴリズム「Ethash」には、事前計算されたデータのセット「DAG」が備えられており、マイニング過程で使用される。
DAGは18か月ごとに約1GBの割合で増加し、現在は4GBに近づいている。DAGサイズがGPUメモリのサイズに近づくと、GPUメモリは動作できなくなるため、マイニングが停止しまう問題があった。
今回のアップグレード「Thanos」の目的は、DAGファイルのサイズを半分にして、古いGPUがDAGをロードして正しく動作できるようにすることだ。4GBのデバイスがさらに3年間マイニングを継続できるようになることが見込まれている。
DAGは元々、マイニングプロトコルにASIC耐性を備えることが目的だった。メモリは比較的高価であるため、DAGサイズの絶え間ない成長は多額の投資を必要として最終的にASICを非推奨にするという仕組みである。
DAGは、従来からのGPUによるマイナーと新たにASICを用いたマイナーの間の競争の場を平準化して、ASICによる乗っ取りと支配を回避することに成功した。しかし同時に、現在でもマイナーによって広く使用されているGPUのサポートが廃止されることに繋がってしまった。今回のアップグレードは、この問題を解決するものとなるという。
度重なる51%攻撃
従来のGPUもマイニングに参加できることで、全体のハッシュレートが上がり、ネットワークの過半数を乗っ取る「51%攻撃」への抵抗力が上昇する。イーサリアムクラシックは、2020年8月に3回連続で51%攻撃を受けたため、強力な対策が求められている。
51%攻撃とは
51%攻撃とは、悪意のある特定のグループがハッシュレートの51%を支配することで、不当な取引を行うこと。攻撃対象となるのは「Proof of Work(PoW)」と呼ばれる、ビットコインも採用するアルゴリズムを採用する仮想通貨。
イーサリアムクラシックとイーサリアムは、同じマイニングアルゴリズムを使用していた。このためハッカーは、仮想通貨のマイニング能力を売買できるNiceHashなどのサービスから、イーサリアムのマイニング能力を借りることで攻撃を容易にしていた。今回、「Thanos」のアップグレードはアルゴリズムに修正を加え、防御力を高める見込みだ。
大手仮想通貨取引所バイナンスなどの業者は「Thanos」アップグレードに対応する。
#Binance Will Support the @eth_classic $ETC Hard Fork & Upgradehttps://t.co/fbR0ijqOb8
— Binance (@binance) November 27, 2020
参考:ETC
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