ビットコインと株価のボラティリティを比較
上場投資信託(ETF)に特化した米投資運用会社、VanEck社が、暗号資産(仮想通貨)ビットコインのボラティリティに関する新たな情報を公開した。同社がビットコインとS&P500種指数の株式を比較し、調査した結果、ビットコインのボラティリティは同指数の多くの銘柄よりも低いことが判明したという。
ビットコイン投資に関するリスクの一つとして繰り返し指摘されているのが、そのボラティリティの高さだが、同社の調査はその「常識」に一石を投じることになるかもしれない。
ビットコインよりも高いボラティリティ
VanEck社は、ここ数年のビットコインのボラティリティの高さは、小さな市場規模や規制環境、また主要な株式/資本市場へ浸透の低さに起因していると説明した。現在でも、ビットコインのボラティリティが高いことは事実であるとしながらも、別の主要な資産クラスであるS&P500種指数を構成する株価と比較すると、「興味深い傾向」が明らかになったと述べた。
2020年11月13日時点で、90日間ではS&P500指数の112銘柄(22%)、1年間では145銘柄(29%)のボラティリティが、ビットコインを上回っていたことが示されている。
VanEck社は、今回の調査結果に基づくと、ビットコインETFが実現した場合(現在、米国でビットコインETFは提供されていない)、「主要インデックスの株式やETFに類似した変動率の特性を示す可能性がある」と結んだ。
VanEck社とビットコインETF
VanEck社は、ビットコイン投資に積極的な姿勢を貫いており、米証券取引員会(SEC)にビットコインETFの申請を行い、仮想通貨業界から多くの期待を集めた経緯がある。
SECは限定的な市場規模、市場操作やカストディの欠如、並びにセキュリティ面での懸念を理由として、これまで数多くのビットコインETFの申請を却下し、アメリカにおけるビットコインETFの提供は未だ実現に至っていない。
同社は、昨年10月に予定されていたSECの最終判断を待たず、その約1ヶ月前に申請を取り下げた。
一方、カナダでは今年4月、ビットコイン投資信託がトロント証券取引所に上場を果たした。デジタル資産やブロックチェーンに焦点を当てた投資ファンド、3iQ社が提供し、一般の投資家向けとなっている。
VanEck社のデジタル資産部門責任者は、カナダでBTC投資信託が承認されたことは、今後、ビットコインETF承認に向けての追い風になるかもしれないと、期待をにじませた。
今回のビットコインとS&P500銘柄のボラティリティに関する比較調査は、ビットコインETFの承認に向けて、SECの懸念を和らげる布石と見る向きもあるようだ。
米フィデリティの見解
米金融最大手フィデリティの暗号資産(仮想通貨)部門子会社のFidelity Digital Assetsは、ビットコインのボラティリティを「完璧な供給の非融通性と介入と無縁の市場とのトレードオフ」であるとみているようだ。多くのビットコイン投資家は、ボラティリティを「大規模な未開拓の市場を抱えた有望資産」にアクセスするためのコストもしくはプレミアムと捉えており、この事実を受け入れた上で投資を行っていると同社は主張している。
さらに、市場が成熟し、様々な金融商品が開発されるとともに、市場参加者の増加も見込まれるため、ビットコインのボラティリティは、徐々に低下していくだろうと予想している。
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