米株式市場の先行き
金融・経済情報メディア大手のブルームバーグが、「ミレニアル世代へのアドバイス」と題して、米国の株式市場は、これまでのような右肩上がりの時代ではなくなるという考察を展開した。
株価が底を打った2009年以降、米国株への投資では、基本的に「株は上がるだけ」(注1)という認識が正しかったかもしれないと、同メディアのコラムニストであるChris Bryant氏は認める一方で、今後、日経平均株価のような「失われた10年」が到来する可能性を示唆した。
(注1)米サブカルメディア「Barstool Sports」の創始者で、現在はデイトレーダーとして発信するインフルエンサー、Dave Portnoy氏の挑発的な発言
米国市場と海外市場の対比
Bryant氏は米国と海外市場の大きな違いを、主な株価指数を例にとり解説した。
- 過去10年間のS&P500インデックスファンドのリターンは、年平均13%(配当金を再投資した場合)で、コロナ禍で一時的に暴落した市場も、米政府の破格の経済対策の影響で、S&P500は史上最高値を更新。(ブルームバーグのデータ)
- 一方、英国を代表する企業の株価指数、FTSE100は20年前を下回っており、ストックス欧州600指数は、20数年前のインターネットバブル期のピークを超えていない。
- 新興国市場の代表的な株価指数、MSCIエマージング・マーケット・インデックスも2007年にピークを迎えたが、その後回復していない。
- さらに「株は上がるだけ」を全否定する事例として、バブル絶頂期(1989年12月29日)に史上最高値を付けた日経平均は、現在、その記録を約40%下回ったままであると指摘した。
株価に影を落とす現在の状況
米国市場も、1929年のウォール街暴落後の約20年間、長期にわたる株価の低迷を経験しているが、現在の金融環境および社会情勢により、今後、株価の上昇を見込むのは困難となる可能性があるとBryant氏は述べ、根拠となる4つの要因について説明した。
1. 極端な評価額
パンデミックの経済的打撃に対応するため、連邦準備制度理事会(FRB)が実行した「大盤振る舞い」の影響で、株価はファンダメンタルズから切り離されて、高値を付けている。現在の株式市場の状況に対し、「過去のリターンが最高に輝いてる時、将来の見通しは最も悲惨になる」と指摘する投資家もいるという。
2. 超低金利政策
ゼロ金利政策がとられると、株式市場はしばしば強気になる。しかし、この施策は将来への悲観論を引き起こす側面も持ち合わせているため、FRBが株式市場を活性化することが困難な状況はしばらく続くかもしれない。
3. 利益率回復の見込み
利益率は、株式のリターンを決める重要な要素で、ここ数十年は非常に高かった。しかし、パンデミックの影響で大打撃を受けた企業の収益は下がっただけではなく、回復する見込みも厳しいままだ。この見込みの厳しさは、競合他社が増えてきたことで利益をあげる機会が相対的に減っていることもひとつの要因。市場を寡占するテック企業であっても、厳格な独占禁止法への対処や、報酬の平等な分配を求める労働者への対処などで厳しい状況に置かれている。
4. 高齢化社会の到来
日本の株式市場が長期低迷している主な原因として、高齢化問題は大きい。米国社会の高齢化は、より緩やかではあるが、2030年までに多くの資産を持つ団塊の世代が65歳を超えるため、金融資産の売却や、高リスク株の回避などが株価に影響を与える可能性がある。
ミレニアル世代にできること
「失われた10年」への対応策として、米国以外の株式への投資を提案している。その理由として、FTSE100指数は、21世紀に入り19%下落したものの、配当金を再投資した場合には、63%のリターンを得た状況を例にあげた。
同氏は、米国企業が、新技術の開発によって、「失われた10年」を回避できることを望んでいると結んでいるが、日進月歩で開発が進み、新たな力強い市場が形成されている暗号資産やブロックチェーン技術については、一言も触れていない。
数々の調査で指摘されているように、ミレニアル世代は、一般的に暗号資産に対して肯定的なイメージを持っていると言われている。金融メディア「The Tokenist」が今年4月に実施したビットコインに対する意識調査では、この世代の45%(男性では50%超)が、株式や不動産、金などの資産よりも、ビットコインを所有することを選んでいる。
「失われた10年」にどのように対応すべきなのか、ミレニアル世代の多くはその答えを既に持っているのかもしれない。
出典:Bloomberg
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