Uniswap初のガバナンス投票結果
先月独自のガバナンストークン「UNI」をローンチした、暗号資産(仮想通貨)分散型取引所大手のUniswapで、初めての提案に対するガバナンス投票が行われ、その結果が明らかになった。
厳密には異なるが、投票を以てトークンステークホルダーの総意を反映する民主主義による意思決定は、「株主総会」のような性質を持つ。
結果は、賛成3959万6759票に対し、反対69万6857票。提案を支持する票が圧倒的に多かった(98.2%)のだが、最終的に否決となった。その理由は、提案が承認されるのに必要条件とされた「4000万票」にあと一歩届かなかったためだ。その差は約40万票、つまり可決に必要な獲得票数の1%の差で命運が分かれたことになる。
否決された提案の内容
皮肉なことに、今回の投票で否決された提案は、提案提出と投票の定足数の閾値を下げる可否を問う内容だった。提案したのは、大手分散型P2Pレンディングマーケット「Dharma」で、幅広いユーザー層がガバナンスに参加できるようにすることで、ガバナンスの活発化を図るためだと主張していた。
現在のUniswapのガバナンスシステムでは、提案を行うには、ネイティブトークンであるUNIの全供給量(10億トークン)の1%(1000万トークン)を保有するか、もしくは委任されることが条件となっている。また、提案が可決されるためには4%の定足数(4000万トークン)が必要とされる。Dharmaは、これらの閾値をそれぞれ、0.3%(=300万トークン)と3%(=3000万トークン)に引下げることを提案していた。
コミュニティから異議
一方、コミュニティからは、1つのアドレスだけで1500万のUNIトークンを保有するDharmaは、提案の内容にかかわらず、すでに分散型ガバナンスの脅威となっているとの声が上がっていた。
コミュニティの著名メンバーであるDavid Feltonは、他の大口保有者であるシミュレーション・プラットフォーム「Gauntlet」(1500万UNIトークン保有)とDharmaの保有分を合計するだけで、新たな提案承認の定足数である3000万トークンが達成可能になると警告。Dharmaの提案の真の目的は、Uniswapのガバナンスをコントロールすることにあると示唆した。
さらに定足数を下げることで、DAOハッキング事件のように、悪意のある提案によって、巨額のユーザー資金を失う事態にもつながりかねないと、Feltonは訴えた。
また、「DeFi Watch」の創設者、Chris Blecは、「明らかにビジネス上の利益が絡んでくるDharmaのような企業は、Uniswapの決定に対して、このようなレベルのコントロールを持つべきではない。権限は、企業ではなく、ユーザーに委譲されるべきだ。」と述べた。
結果が語るもの
最終的に、Dharmaの提案は否決される結果となった。DharmaのCEO兼共同創業者であるNadav Hollanderは、「残念な結果だ」とツイートした。
It’s impossible to know how many of the abstained votes wanted to vote no, with a quorum of >50% abstaining means voting no, and many voters knew that
— Agustín Aguilar (@Agusx1211) October 19, 2020
「85%以上の投票率、272人が賛成、48人が反対に投票という95%を超えるの支持にも関わらず、投票は失敗に終わった。」
これに対し、提案への反対を表明していたコミュニティメンバーのAgustín Aguilarは、「君の投票など影響しない」と言われていたことの、まさに正反対のことが起こった、とコメント。その理由として、提案へ拒否を表明するために、棄権したユーザーが数多く存在したのではないかと推測している。
また、Dharmaは、提案提出の要件と投票の定足数の引き下げを別々に提案すべきだったという意見も見られた。
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