「特別な規制は必要なのか?」仮想通貨デジタルアセットの課題点|Swell2020

Blockchain
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仮想通貨・デジタルアセットの規制アウトルック

「Swell2020」におけるパネルディスカッション「デジタルアセットの規制展望」で、アクセンチュア社のブロックチェーン上席アドバイザーOusmene Mandang氏が、ブロックチェーン・金融分野の専門家と対談。デジタルアセットの規制枠組みを分析し、グローバルの規制への挑戦について語り合った。

Ousmene Mandang氏は、大手コンサル「アセンチュア」に所属する中央銀行デジタル通貨に特化した上席アドバイザーで、これまで複数のデジタル通貨プロジェクトを手がけてきた。スウェーデンが発行を計画するCBDCの「e-krona」がその一例だという。

パネルに登壇したのは、米国首都ワシントンD.C.にあるブロックチェーン・仮想通貨推進団体Blockchain Associationの取締役Kristin Smith氏、欧州連合の金融サービス部に所属するデジタルイノベーションのアドバイザーPeter Kerstens氏、そしてアフリカ最大手法律事務所ENSAFRICAで役員を務め、主に仮想通貨セクターに携わるAngela Itzikowitz氏の三人だ。

規制の問題点とは

まず、これまで期待されていた仮想通貨の利用普及や有価証券のトークン化は未だ実現していない現状について、Mandang氏は国別およびグローバルの規制環境が不透明なところが一つの原因と見ている。また、これまで取引のセトルメントは一元化になっていないが、仮に中央銀行がホールセール型のCBDCを発行した場合、セトルメントの利便性が改善し、これらの新興アセットはより成長する見込みがあるとした。

この点について、Mandang氏はそれぞれの登壇者に意見を尋ねた。

Kerstens氏は、証券や債券のトークン化が未だ本格的に実現していない理由について、より明確な規制枠組みが不足している点に同意している。

一般的な金融機関は、規制環境が明確ではない金融商品を避ける傾向にある。そのため、現在では、証券などのアセットのトークン化はそれほど金融機関、投資家の関心を掴めていない。

この見解について、Smith氏も同意し、米国では一部の規制当局と連携し、部分的な規制明確化の求めに成功したが、カストディサービスの制度など伝統金融アセットのトークン化にあたって、必要な規制ガイダンスは欠如しているのが現状だと指摘した。

Smith氏は、SECのClayton長官の言及についても取り上げた。Clayton長官は今月6日のウェビナーで、「将来、全ての株式がトークン化される可能性もある」と、初めて金融アセットのトークン化についてコメント。該当する制度について、「すでにある規制フレームワークでも基本には十分に機能する」と説明したが、より具体的なルール作りに関しては言及しなかった。

一方、証券など金融アセットのトークン化以外の分野では、通貨監督庁(OCC)が7月に、連邦公認銀行(貯蓄貸付組合および国民貯蓄銀行等)が暗号資産(仮想通貨)のカストディサービスを提供できると発表し、9月にはステーブルコインの準備資産(法定通貨)を保管することができるよう新たなガイダンスを発表した。

それらの動きを受け、Smith氏は米国における仮想通貨セクターの規制明確化は以前よりも前進したと述べながらも、包括的な規制にはまだ課題が多いと感じている、ともコメントした。

特別な規制は必要なのか

続いてMandang氏は、証券トークン化のためになぜ既存の規制以外で別の制度を作る必要があるのかについて疑問を抱き、規制は本来、金融商品の性質で決められるものであるはずだが、現在はその逆でブロックチェーン技術が規制の方向を取り決めているようになった理由について登壇者に意見を求めた。

Kerstens氏は、規制者は技術に対して中立的な立場を取りながら、それぞれの商品の性質を検討し規制を作ることを望んでいるが、現実ではそれぞれの規制は当時の技術状況を反映し、一部では技術の利用を必要としている。

一例として、欧州で分散型台帳を基盤とするマーケットインフラを利用し取引プラットフォームを運営することが合法か違法かを挙げた。「欧州委員会の観点としては可能だが、法的環境が未だ整っていないのが課題だ」と、Kerstens氏は話した。

また、規制の観点から、数知れずの仮想通貨銘柄の中から、「通貨」、「金融商品」などといった分類をする課題点はどこにあるのかについて質問について、Smith氏は様々なユースケースを持つ仮想通貨は時間や技術とともに性質が変わることもあるため、規制者は固定的に分類することに追いつかないと指摘した。

一方、米国ではSECやCFTCなどの主要規制当局が仮想通貨のトークンを定義し始めており、国会では仮想通貨の定義を目指す法案も提出されている。しかし、ブロックチェーン技術が広範囲なアセットに対応できるため、規制者も政策立案者も全体を俯瞰しなくてはいけないという。

サービスプロバイダーの規制は?

さらに、仮想通貨・デジタルアセット自体だけでなく、それらを取り扱うサービスプロバイダー等エンティティに対する規制も業界で注目されている。

例えば、欧州では決済業は基本規制されているが、仮想通貨は「通貨」に該当するかどうかが注目点となる、とKerstens氏は話した。

仮にその仮想通貨銘柄が「資金」に該当した場合、決済サービスを規制する管轄に置かれるはずだ。

しかし、現実では一部の銘柄は資金に該当するが、多くの銘柄は資金に該当しないため、それらに関連するサービスプロバイダーは基本規制されていない現状にある。

ーKerstens氏

また、消費者を保護するための規制について、弁護士のAngela Itzikowitz氏は南アフリカの状況を語った。

「南アフリカでは中央銀行はCBDCを採用するために規制環境を整えようとしているが、多くの仮想通貨は貨幣ではないため、規制は欠如している」と指摘し、「証券の規制では中心となる発行企業があることが想定されているが、仮想通貨では非中央集権的性質を持つため、既存の規制枠組みに取り組まれていないことが課題だ」と説明した。

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