ロシア中銀がCBDCについての協議書を公開
ロシアの中央銀行が、中銀発行デジタル通貨(CBDC)である、デジタル・ルーブルについての協議書を公開したことが判明した。年末までフィードバックを受け付けている。
ロシア中銀は、市民や企業の変化するニーズに応えて、デジタル・ルーブルを発行する可能性を検討しており、これについての幅広い議論を目的として協議書を発行したという。
その後、限られたユーザー内でデジタル・ルーブルを試験運用する可能性もある。
デジタル・ルーブルの概要
ロシア中銀によると、デジタル・ルーブルは、市民、企業、金融市場の参加者、州など、すべての経済主体が利用できるようになるもので、支払い手段、価値の物差し、価値の保存という、通貨の機能3つをすべて備えるものである。
デジタルルーブルの取引は、電子ウォレット、電子決済、またはモバイルアプリの使用に似たものとなり、オンラインとオフラインの両方で実行される見込み。
オフライン取引の場合、電子ウォレットに一定量のデジタルルーブルを預けておくことで通信ネットワークにアクセスできない場所でも決済が可能になるという。
銀行口座やカードからの資金、現金を使用して、デジタルルーブルの形式でお金をチャージすることができる。
また、デジタル・ルーブルが現金などに代わることはなく、現在流通している様々な形式のお金に追加されることになり、用途としては、商品やサービスの支払い、組織や州への支払い、送金、金融商品やデジタル金融資産との取引の支払いに使用可能だ。
分散型台帳、中央集権型システム、その混合型のどれを使用するかは決まっていないが、イーサリアムブロックチェーンを用いたスマートコントラクトについても言及された。
プライバシーの問題
CBDCでよく懸念事項として指摘されるプライバシーの問題についても、協議書は言及。
現金や分散型の暗号資産(仮想通貨)とは異なり、デジタル・ルーブルを匿名で使用することはできないものの、中央銀行は取引に参加した者が誰かという情報は分かるが、取引の目的にはアクセスできないという。
ユーザーは、ロシア中銀のプラットフォームでKYC(顧客身元確認)手順を実行する。
デジタル・ルーブルが社会にもたらす利点
ロシア中銀は、デジタル・ルーブルのもたらす恩恵として次のような項目を挙げた。
- ある金融仲介業者から別の仲介者への資金移動を迅速にすることで、イノベーションと競争を促進。
- 政府資金が割り当てられたプロジェクトが汚職などにより不正利用されることを防止。
- 金融インフラへのアクセスが制限されている人口過疎地や遠隔地などで、新しい便利な決済手段になる可能性がある。
- 国内資金が外国のデジタル通貨として流出するリスクを制限し、マクロ経済と金融の安定に貢献する。
仮想通貨規制方針については秋の国会で審議
ロシアはCBDCの検討を一歩進めた形だが、一般的に流通する仮想通貨については保守的な姿勢を保っている。
ロシアで2021年1月1日より施行予定の「デジタル金融資産関連法(On Digital Financial Assets:DFA)」によると、仮想通貨の売買は合法だが、サービスや商品の支払いに使用することは禁止されることになる。
ロシアの経済開発省が過度な規制はロシア経済にとって損失になると主張する一方で、ロシア中銀は過去、仮想通貨に批判的な発言を繰り返しており、政府内でも意見は分かれている。
いずれにしてもロシアにおける仮想通貨規制の詳細は12月下旬に終了する秋の国会で審議される「デジタル通貨関連法(DA)」に掲載される予定で、この内容が注目される。
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