コミュニティで議論
日本と海外のイーサリアムコミュニティに違いはあるのか、慎重さを重んじる日本でイノベーションをどうもたらすかついて、日本経済新聞社と金融庁主催のブロックチェーンサミット「Blockchain Global Governance Conference 、FIN/SUM Blockchain & Business (フィンサム)」のイーサリアム(ETH)セッションで意見が交わされた。
セッションには、モデレーターとしてEEA(エンタープライズイーサリアムアライアンス)のリージョナルヘッドである石黒一明氏を迎え、Maker Foundationの日本地域リーダーであるキャサリン・チュー氏、イーサリアム財団から宮口あや氏、クロマティックキャピタルのグラント・ハンマー氏が参加した。
イーサリアムコミュニティ、日本と海外の差は
イーサリアム財団の宮口氏は、「ビットコインと違ってイーサリアムはアプリを構築できるという特徴がある。開発者や企業が集まり、様々なプロダクトが生み出されてきた」と説明。
イーサリアム自体がオープンソースであることから、コミュニティもオープンな雰囲気を持っており、同時に大切にされてきた部分でもあるという。
なぜコミュニティが大切なのかという点について、Makerのキャサリン氏は、コミュニティは情報を交換する場として必要とされていると説明する。
(イーサリアムでは)基礎を作る必要はない。(すでにある)必要なパーツを使ってブロックを組み立てるように自分のプロダクトを構築するということができる。
そのためには、互いの持つ技術について情報交換の場が必要となる。コミュニティはお互いに学びあう場ともなり、エコシステム全体での好循環にもつながっていくという流れだ。
また、キャサリン氏が日本と海外との違いについて問われた際に挙げたのが「言語の壁」であった。
一番大きな課題は言語。イノベーションのもたらす速度は非常に早く、分散金融の分野では主要言語は英語となる。日本のコミュニティが最新状況をキャッチアップするには努力が必要だ。ただ、意欲については変わらないか、もしかしたら日本の方が高いかもしれない。
近年では翻訳ツールなどが進歩しており、その壁は次第に薄くなっている部分もあるが、英語で行われるリアルタイムの議論では、やはり日常的な英語話者との間に一定の壁が存在する。
日本からDeFiは生まれるか
今回特に議論が盛り上がったのは、日本と米国との間にある「イノベーションの起こし方」の違いだ。
キャサリン氏)日本の場合、優れたアイデアが出てきたとき、まずそれが合法か否かをチェックするところから始まる。そして、多くの場合明確な規制がなかったりする。
米国の場合は、誰かが(新しいものを)作りたいと思ったらまず実行に移し、(合法か否かは)後で心配するということがある。それが(海外との)一番大きな違いかもしれない。
宮口氏も、既存の規制の枠組みのなかに収める必要はないとし、規制当局の方々も含めてオープンな議論に参加してほしいと呼び掛ける。
宮口氏)日本には「石橋を叩いて渡る」ということわざがある。文化としてはまず確認しないと前に進まないというところはあるが、それではイノベーション性の高いアイデアが出てこない可能性もある。
キャサリン氏が指摘するように、分散型金融(DeFi)において日本発となるようなプロジェクトはまだほとんど表れていないのが現状となっている。
合法かどうかという段階で議論を止めるのではなく、規制当局を交えて前向きな議論を行うことが、今求められている。
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