本は紙から電子へ……人間の頭脳の働きはどう変わる?

私たちが目にする書籍が、紙の本から電子ブックへ大きく転換している。これは人間の情報収集と頭脳の働きにどのような変化を生むだろうか? そうした基本的な疑問に、明快に答える啓発書が出た。

メアリアン・ウルフ『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(インターシフト)
メアリアン・ウルフ『デジタルで読む脳×紙の本で読む脳』(インターシフト)

確かに電子ブックと紙の本双方に長所・欠点がある。電子ブックはどこでも読めるし、蔵書のスペースも不要だ。だから一気に広まったが、紙の本が駆逐されたわけではない。

紙の本は子供の「深い読み」を育むから、教育から絶対に外すことはできない。「他人の視点に立ち、その気持ちになるという行為は、深い読みプロセスのもっとも深淵で、あまり知らされていない貢献」(61ページ)なのである。一方、日本の義務教育でも教科書の電子化が進み、デジタル読書を避けることは不可能だ。

著者は字を読む脳(読字脳)を研究する発達心理学者で、読書が脳をどう変えるかを論じた前著『プルーストとイカ』は国際的にも評判となった。本書では、紙とデジタル双方の良い点を活用した読み書き能力の構築を目指す。すなわち、適切な時期に紙とデジタルの脳回路を育み、必要に応じてスイッチが可能な「バイリテラシー脳」を育てることを提案する。