本当に「要領が良い人」が在宅勤務で意識している3つの要素 リストの上から仕事をしてはダメ

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在宅ワークでは生産性の差がはっきりとでる。本当に「要領の良い人」はどんな働き方をしているのか。戦略コンサルタントの高砂哲男氏は「最適化のためには、自分がやること、すなわち仕事の投入量を減らす必要がある。そこには大きく3つの重要な要素がある」という——。

※本稿は、高砂哲男『フューチャーワーク 新時代で成果を2倍にする思考とスキル』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、自宅からビデオ会議を行う人

※写真はイメージです

コロナが明らかにした「生産性の差」

コロナ危機の影響でリモートワークが仕事の中心となるビジネスパーソンも多いなか、私たちの働き方は大きく2つのタイプに分かれています。一つは、在宅ワークに移行しても今までと同じ時間内で業務を終わらせ、今までと同等の成果を上げられるタイプ。もう一つは、仕事の効率が極端に落ちてしまい、業務を終わらせるまでの時間が大きく増えてしまうタイプです。

実のところ、働き方における生産性の差はこれまでも存在していたわけですが、コロナ危機やそれに伴うリモートワークが、2つのタイプの差を白日の下にさらしたと言えるでしょう。

それでは、このような働き方の差はどこから生まれるのでしょうか。

ビジネスパーソンにとって、効率的に作業することはもはや仕事の基本です。

意味もなく夜遅くまでだらだらと仕事をすることや、やらなくてもよい無駄な仕事をすることほど、価値を生まないものはありません。

しかし、「効率的に作業する」ことを意識しすぎると、どうしても「業務量(インプット)をいかに減らすか」が考えの中心になります。成果を出すためにどうすれば短期間で作業ができるのか、どうすれば必要ない業務をやらずに済ませられるか、といった面がハイライトされます。残業を無理やり禁止するといった取り組みはその代表例とも言えます。

「業務効率化」から「業務最適化」へ

インプットを減らし、効率的に作業することはもちろん重要です。

しかし、生産性が変わらずインプットを減らしただけでは、アウトプット(成果)は増えません。むしろそのままではアウトプットは減少します。

そのことは、成果の公式を眺めてみれば明らかです。

成果(生産量・付加価値量)/ 労働の投入量 = 労働生産性

未来の働き方は、インプットを減らしながらアウトプットを増やすことが必要です。

この視点から作業の進め方を捉えなおすと、「業務効率化」からさらに一歩踏み込んで、「業務最適化」を心がけることが重要なのです。

では、「業務最適化」とは具体的にどういうことでしょうか。

私は、長らく戦略コンサルタントを務めていますが、戦略の本質は、限られたリソースを使って最大限のアウトプットを生み出すためのオプションを検討し、最適なオプションを選択することにあると考えています。

もっとわかりやすくいえば、「限られた業務時間から得られる成果を最大化するために、仕事・業務の選択と配分を最適化する」ということです。

具体的には、以下の選択と配分を自分の中で最適に決められるようにすることが、短期間で成果を上げるこれからの働き方では重要となります。

・仕事のどの部分に時間をかけ、どの部分には時間をかけないかを決める
・仕事のどの部分は自分で行い、どの部分は人に任せるのかを決める
・仕事のどの部分のアウトプットの質を最大化し、どの部分のアウトプットの質を諦めるかを決める

本当に「要領が良い人」は戦略的

「要領が良い人」といった言い方があります。

この「要領が良い」には、手を抜いているというマイナスの響きが含まれていることがしばしばあります。

しかし、本当に要領の良い人は手を抜いているのではなく、実は戦略的に作業ができている人が極めて多いのです。

要領の良い人は本来責められる対象ではなく、褒められる対象です。

要領良く成果を上げるためには、2つの視点が必要です。

①自分でやることを極力減らす
②質の高い成果を出すために必要なことに集中する

自分にとって不要な業務をそもそもなくしてしまうか他の人に任せて、残った時間を使って短期間に質の高い成果を生み出すことに集中する。これが業務最適化の本質だといえます。

冒頭の働き方のタイプの差は、こうした戦略的な作業量の違いによるところが大きいのです。

ではこの2つの視点から、仕事をただ絞り込み減らすのではなく、戦略的に作業し、業務を最適化するために、どのような働き方をすればよいか、具体的に見てみましょう。

仕事の投入量を減らす「3つの要素」

まずは自分がやること、すなわち投入量を減らすことについて解説します。

仕事の投入量を減らすためには、大きく3つの重要な要素があります。

①業務量を減らす
②業務時間を減らす
③業務の手戻りをなくす

こうした取り組みを進めることを、ビジネスの世界ではBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)と呼んでいます。

このBPRという言葉は、1990年代から一般的に広まったと言われていますが、会社のオペレーション改革の現場では、さまざまな分析や業務改善が研究され、手法が確立されています。

近年では、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを活用し、自動化や省人化を進め、人間の投入量を極力減らしながら業務効率を上げていく取り組みが進んでいます。

会社の業務改善にこうした手法が積極的に取り入れられているにもかかわらず、その業務の主な担い手である個人目線からもBPRが意識されていなければ効果も生まれません。

業務量・業務時間を減らす最も効果的なことは、もちろん「やらないことを増やす」ことです。やる必要のある業務とやる必要のない業務を見極め、やる必要のない業務を減らせれば、業務量は削減できます。

「リストの上から仕事をする」のをやめてみる

しかし、言うのは簡単ですが実際にやるのは簡単ではありません。

なぜ難しいかといえば、

・どれをやる必要があり、どれをやらないで良いかが、自分ではわからない
・上司や周りから、「とにかくやれ!」と言われてしまう

からではないでしょうか。ただ、逆に言えば上記のことを自分の中である程度コントロールできれば、成果を減らさず(もしくは成果を増やしながら)、作業量を減らすことができるはずです。

特に、どれをやり、どれをやらないで良いかの判断を自らでできるようになれば、業務を主体的にコントロールできます。

そのための最初の重要な手法は、ゴールベースで業務を感覚的にイメージしてみることです。

通常、私たちは仕事でやることを(明示されているか頭の中にあるかは別として)リスト化しています。

私たちは、こうしたリストやフレームワークを基に作業をどうしても前から、上から順番にやりたくなるものです。しかし、仕事の目的は成果を上げることです。業務を順番に行うことではありません。

にもかかわらず、業務に慣れてくるといつしか、決められた業務を順番に行うこと自体が目的化してしまうものです。

そうならないよう、仕事を「成果につながるか」によって選別します。

仕事の優先順位は「感覚的」に決める

具体的には、まずは仕事の成果を改めて書き出して設定します。

その上で、個々の業務が成果にどのくらい寄与するか、業務と成果をつなぐストーリーを、自分の頭の中でイメージすることです。

業務をうまく行ったときに、どんな結果が待っているかをストーリー化します。成果が上がり喜ぶ人の顔が浮かんだり、褒められて自分の満足感が得られたり、その後のストーリーを頭の中で思い浮かべてみてください。

すると、良いストーリーがイメージできるものもあれば、成果につながるイメージが湧かない業務や何のストーリーも描けない業務も、見つかるかもしれません。

高砂哲男『フューチャーワーク 新時代で成果を2倍にする思考とスキル』(河出書房新社)

そうしたイメージを基に、業務の成果への寄与度を評価するのです。

その上で、成果へのイメージが湧かない寄与が低い業務は、一旦脇に置いておきます。これで、当面の業務量は減らすことができます。

私の経験上、イメージの湧かない業務を無理やりやっても、最終的な成果にはつながりません。であれば、思い切って止めてしまったほうが効果的です。

感覚的な仕事の選別に抵抗感を覚える人は多いでしょう。しかし近年、直感やストーリーに関する書籍が、ビジネスで注目を浴びているのは単なる偶然ではありません。

複雑で答えのない世の中だからこそ、自分の感覚を大切にする仕事の進め方が重要になるのです。

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