発売11カ月で世界200万部、そのうち4分の1が日本で売れている(2019年12月時点)『FACTFULNESS』。同書は、私たちの世界に関する「勘違い」を「10の本能」に分類している。今回、その10の本能を現代ニュースに絡めて紹介していく。第7回は「焦り本能」だ――。(全10回)
▼焦り本能
「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

問題にぶつかったとき、咄嗟に決断を下そうとしてしまうのが焦り本能だ。かつてはこの焦り本能が人の命を救っていた。肉食動物と出合ったときにはじっと考えている暇はない。だが現代においては、瞬間的な命の危機より複雑で抽象的な問題と向き合うことのほうが多い。決断を焦ると、人は批判的に考える力を失って判断を誤る可能性が高まる。決断の前に深呼吸して、正確で重要なデータに基づき、極論は排して考えることが必要だ。

業界団体が通達してもなくならない買い占め

新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、一時期、トイレットペーパーの買い占めが横行し、店頭から消えました。業界団体が「供給は足りている」と会見したのにもかかわらず、しばらく品薄状態は続いたのです。なぜ一部の人は不足しないことを知りながら、買い占めてしまうのでしょうか。

コロナウイルスcovid-19コンセプトに関する消費者の購入パニック。スーパーマーケットのコンセプトで一括で必需品を購入する人々。女性はトイレットペーパー、パスタ、バックウィート※写真はイメージです

脳内には、意思決定のシステムが主に2つあります。1つは直感や感情に基づく「システム1」。もう1つは理性や論理的思考に基づく「システム2」です。何か事が起きたとき、まず「システム1」が作動しますが、これだけで行動していては、すぐ騙されるし、失敗することも多い。そこで「本当にそれでいいのか」とブレーキをかけるのが、「システム2」の役割です。