何年も議論が必要な重要案件が、なぜ急浮上しているのか

新型コロナウイルスの伝染拡大は、最悪の事態は回避して「出口」を見いだそうという局面に入ってきたが、依然として予断を許さない。だが、その推移を見定める前に、秋から新学年を始める「9月入学」に向けて安倍政権が大きくハンドルを切り始めた。

これまでも浮上しては消えてきたこの問題。本来ならば何年も議論が必要な重要案件が、なぜ急浮上しているのか。安倍政権はコロナ問題で後手後手の対応が続いている。さらに検察官の定年を引き上げる法案をめぐり国民の批判が高まっている。このため、「9月入学」をぶち上げることで国民の関心をそらそうという思惑が透けてみえる。

口火を切ったのは高校生の署名運動だった

5月8日、首相官邸に陣取る杉田和博官房副長官のもとには、各省庁の次官クラスが次々と入った。目的は「9月入学」についての論点整理。コロナの感染拡大で全国の小中高校で休校が続く中、4月に急浮上した「9月入学」問題は、杉田氏のもとで6月をめどに論点を整理することになっているのだ。

警察官僚出身で、内閣危機管理監などを歴任した杉田氏は危機管理のプロ。未曾有の危機となっているコロナ対応が続いている今、「9月入学」の司令塔になるのは少々奇異な印象も受けるが、安倍政権がこの問題に前のめりになっている証左ともいえる。

今回「9月入学」の盛り上がりは、複雑な経緯をたどった。最初は高校生がインターネットを通じて署名運動を展開。休校がずるずる続き、学校、地域によって教育格差が広がることが避けられない状況の中、平等に9月からリスタートしたいという若者の叫びだった。

学生たちの訴えに小池百合子都知事、吉村洋文大阪府知事ら、発信力のある知事らが共鳴。その後で、安倍政権が食いついた。安倍晋三首相は4月29日の衆院予算委員会で「これくらい大きな変化がある中では、前広にさまざまな選択肢を検討したい」と答弁。その後、「9月入学」に積極的な議員たちと積極的に会いながら、検討を続けるように求めている。最後で乗っかったような形の安倍氏だが、今や推進派の最右翼のようになってきた。