「プライバシー通貨と法的順守は両立する」
北米の太平洋岸北西部に本拠を置く法律事務所で最大規模の大手法律事務所パーキンス・コイエが、プライバシー機能を擁する暗号資産(仮想通貨)に関するレポートを発表。
Monero、Dash、Grin、Zcashなど匿名性を重視したプライバシー通貨(匿名通貨)を取り扱う場合でも、仮想通貨取引所などが、マネーロンダリング対策(AML)の義務を遵守することは可能だと論じている。
プライバシー通貨は、管理不能なほど高いAMLリスクを引き起こすことはなく、実際にダークネットで使用されるアドレスの90%以上がビットコインであり、ダッシュ(DASH)、モネロ(XMR)、ジーキャッシュ(ZEC)の合計はわずか0.3%だったことを指摘。
また、プライバシー通貨は仮想通貨以外のマネロン手段(現金、カードなど)と比べれば、何らかの形の送金記録を提供することで取引を検出しやすいとも示した。
結論として、レポートは次のように述べる。
プライバシー通貨は新興技術だが、個人・企業の金融プライバシーを保護するための、重要な取り組みの一環。AMLリスクは現実に存在するものの、その成長を阻害する可能性のある規制は不要だ。
むしろ、VASP(仮想資産サービス・プロバイダー「ウォレット・取引所等」) は、効果的にリスク対処するプログラムを維持することで、資金洗浄リスクに適切に対処することが可能だ。
そして、現在のAML規制の下でVASPのプライバシー通貨取扱いを許可すれば、マネロン防止と、有益なプライバシー保護技術の開発を両立させることができると続けた。
既存のルールでマネロン対策が可能
レポートによると、特に金融活動作業部会(FATF)やFinCEN(米国金融犯罪捜査網)、日本の金融庁など規制機関の要求するルールを遵守することが十分なマネロン対策になるという。
例えばFinCENの規制下では、仮想通貨送信者のVASPは、受信者のVASPとの情報チャネルを介して、顧客の身元など必要な情報を送信しつつ、ブロックチェーン上でユーザーの取引を実行することができる。
またKYC(顧客身元確認)が義務付けられているため、両方のVASPがそれ自身のKYCプロセスを通じて、規制上必要な情報をすでに知っており、コンプライアンスのために共有することが可能だ。
そのため、プライバシー通貨の性質が法的規制の遵守を妨げることはないという。
さらに、レポートは、コンプライアンスをサポートする民間ソリューションも活用できるとする。
具体的には、ブロックチェーンセキュリテイ企業CipherTraceが提供する「トラベルルール情報共有アーキテクチャ(TRISA)」や、ID認証技術企業Netkiの「TransactID」の名前を挙げた。
プライバシー機能も活用可能
上述のほか、プライバシー通貨自体が持つ機能を活用して、コンプライアンスに必要な情報を共有することもできるという。
例えば、ジーキャッシュでは、ZECをz-address(プライベートアドレス)により送受信するユーザは、閲覧キーにより該当取引の詳細を明かせる。
閲覧キーは第三者と共有することが可能なので、この機能を使えば、ユーザーとVASPは特定のアカウントに関連する取引の詳細を第三者に開示することが可能だ。
また、取引送信の際にメモを記入する機能も存在しており、必要とされる情報を書き込めるようにもなっている。
レポートは、従来の電子取引で顧客情報が漏れた際の資金盗難リスクや、企業の経営秘密の漏洩リスクなどを挙げ、プライバシー通貨はこうしたリスクを抑制できるものだとも説明した。
参考:パーキンス・コイエ
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