『マネパカードを暗号資産のブリッジに』新仮想通貨取引所コイネージ奥山社長インタビュー

Blockchain
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今年7月に金融庁の認可を受け、新たな仮想通貨取引所として登録されたマネーパートナーズのグループ会社コイネージ。 今回、金融庁公認の自主規制団体「一般社団法人日本暗号資産取引業協会(JVCEA)」の会長も務めたコイネージの奥山社長にインタビューを行った。

5年間で大きく変わった仮想通貨業界

――コイネージはこの度7月7日に暗号資産交換業者として登録され、7月27日からサービスリリースをされています。グループ会社であるマネーパートナーズは2015年から暗号資産(当時は「仮想通貨」、以下同じ)の取り組みを開始されていますが、5年間の暗号資産業界の移り変わりについて見解をお聞かせいただけますか

マネーパートナーズが取り組みを始める1年以上前ですか、マウントゴックス事件がありまして、その辺りから私はビットコインに興味を持ち始めました。

事件の前に日本の大手ベンチャーキャピタルがマウントゴックスに出資するかもと言う話があり、フィンテックまわりのデューデリジェンスの話が私のところに来たんです。その時に初めてビットコインを知りました。

色々勉強しまして、ビットコインは面白いけれども、マウントゴックスは危ないなという話になりまして、マウントゴックスは止めておいたほうがいいと提案していました。結果マウントゴックスに対しては「出資せず」という形になり、その後あの事件が起こりました。

その後も半年くらい情報を追いかけ続け、米国の方ではペイパル、Amazon、マイクロソフトなどビットコインの決済対応を始める会社も増えてきた。段階的に見て行くと「クリティカルマスを越えていく、これは無くならない」と確信し、その年の12月に金融機関の担当者向けに説明会を主催し始めました。 これが、現在の「日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)」の前身になります。

会計的な部分、制度的な部分とか、顧客に対しての約款など、金融機関の経営者としては、様々なところに穴があるねとか、まだ踏み込めないね、どうやって地固めしようかというところを模索していました。

「暗号資産関連事業をやりたい」ということで、金融庁にもたくさんお願いや相談に行きました。

当時、「マネーパートナーズが証券・FX会社として金融商品取引業者の看板を持つ状態の中、ビットコインに関し検討ならいいですか」とお聞きし、「検討なら良い」とお答えいただいたので、当社は金融機関としては日本国内で初めて、2015年に「ビットコインを取扱うことを検討しています」と宣言したんです。そして、勉強会などの取り組みを進めていきました。

そんな中、3年前(2017年春)に施行された「改正資金決済法」に暗号資産が組み込まれました。

さっそく当社は暗号資産交換業の登録取得に動き、金融商品取引業と複数の法定通貨に対応したプリペイドカードである「マネパカード」事業にかかる資金移動業との兼業承認に加え、暗号資産交換業の「国内第1号」を頂くことが出来ました。ただ、残念ながらこの第1号の方はまだビジネスに至れていません。

と言いますのも、ビットコインと言うのは一般認識として「何か悪いもの、リスクのあるもの」という色眼鏡がありました。

我々は、FX・証券という事業領域で様々な取引先である金融機関等とやり取りさせて頂いているのですが、「おたくが暗号資産を扱うんだったら取引は停止するかもしれない」ということを示されたり、これは簡単にはビジネスに出来ないなと。

暗号資産交換業の登録を持っているからどうという話ではなく、マネーパートナーズに登録している34万人のお客様にご迷惑を掛けるわけにはいきません。

間違ってもFXや証券サービスが停止してしまうことになってはいけないと。そこで取引先である金融機関等と交渉を続けているのが現状です。暗号資産の事業に参入したいとはずっと思っており、粘り強く、諦めずに取り組みを続けている状況です。

どこでも使える「実需決済としてのビットコイン」を実現させたい。「ビットコインは、世の中で実際に利用できます」というのをぜひやりたい。

マネパカードは複数の法定通貨に対応したプリペイドカードで、MasterCard®のネットワークを使ってどこでも利用できるという特性を持っています。

このカードにビットコインを残高として持っていただけるようにし、マスターカードが利用できる店舗なら街のどこでも利用できる、ビットコインを日本円に変えるなどをマネーパートナーズの方で自動的に行って、ビットコインなど暗号資産を持っていればどこでも使えるという環境を作りたい。

日常の決済インフラにビットコインを接続できる道をどうやって作るか。皆が暗号資産をやり取りできるゲートウェイになりたいんです。マネーパートナーズでは、ビットコインの「決済」という側面を追いかけてきましたし、これからも追いかけていきたいと考えています。

「ビットコインは無くならない」

ここ2年の状況については、国内外で規制が整備され、暗号資産の取扱いが登録制になるなど、様々な制度改革が起きていますが、暗号資産の市場規模自体は伸びています。

アルトコイン銘柄の価格が上昇したり、ビットコインも一時より下落したりと紆余曲折はありますが、トランザクション自体は頻繁に起こっているわけです。海外を見ている限り、暗号資産マーケットが落ち込んでいるという感覚はありません。

日本では、2018年1月にコインチェックさんでの不正流出被害以降、金融当局が、こうした事件を二度と起こさないために環境整備を進め、かつてのように、誰でも簡単にビットコインの交換所事業に参入したり、ウォレットを提供したりはできなくなり、参入要件が厳しくなりました。

一方、グローバルな視点でやはり「ビットコインは無くならない」と思うところがあって、我々としては何とかビットコインの取引や交換ができる状況について早期参入を図りたいと画策してきましたが、マネーパートナーズという会社が、「金融・証券・FX」事業と兼業でやろうとしているところが足枷になっていました。

「コイネージ」の開業

単独だと結構な資本が必要だったのですが、大和証券グループ様とお話しして、マネーパートナーズグループ内に、別の子会社を立てようと2019年3月に意思決定しました。

マネーパートナーズとは異なり、決済ではなく、暗号資産交換業を専業とし、キャピタルゲイン目的のトレードを含む暗号資産と法定通貨の交換業務を広く取扱う事業を営みたいと、こちらを優先してビジネスインしていくということで準備をしてまいりました。

2019年6月に新たな子会社の設立に代えて、コイネージ株式の取得を最終決定し、マネーパートナーズグループでは全力でコイネージの暗号資産交換業の登録に向けリソースを傾けてきましたが、それでも約1年かかりましたね。

登録し開業準備に至るまで時間をかけ、人員や内部管理態勢の整備にも取り組むなかで、コストも重くのしかかってきまして。これまでに20億円ほど資金を拠出しながら、ようやくコイネージをスタートラインまで持ってこれたという状況です。

約50名の人員がコイネージ開業のオープニングスタッフとしてお客様をお待ちしています。並々ならぬ想いを私としては持って、今後の未来を見据えております。

「ポスト・コロナ」の金融市場を見据えて

新型コロナウイルスが2月下旬から猛威をふるいましたが、新興国通貨とか有価証券投資、株式投資など世界的にリスクオフだったんです。とにかく「米ドルにしておけ」と、市場全体から資金の引き上げ勢いが強く、安全資産といわれるゴールドまで売られ、約20%ほど値下がりするような局面になりました。

これに合わせてビットコイン価格も約40万円まで下がり、原油先物もマイナス価格になったりしました。株も暴落して、新興国通貨も下がって・・・ドルへの巻き戻しが2月~4月に起こりました。

このようなパニック相場が一服した時どうなったかというと、いわゆる「ポスト・コロナ」と呼ばれる、コロナ後のマーケットはどうするのか?安全資産は何か?と世界中の投資家が考え始めたわけです。

特に見直されたのは、ゴールドでした。

ゴールドのポートフォリオへの需要が高まったのです。海外では「日本円」を買っておけという話もありましたが、(日本は)コロナの対応が甘いのではないかと「?」マークも付いていました。その結果、円への資本流入が停滞して、ドル円相場を中心に停滞感を示していたのが今年4月~7月の状況と言えます。

ビットコインは、ゴールド値下がりと共に売られましたが、その後代替資産として見直し買いも入ったか100万円水準まで戻りましたね。

かつては、ビットコインのファンダメンタル的根拠はどこだ、「狸の葉っぱ」じゃないか、と皆さんおっしゃっていましたが、直近では逆に、コロナ対策で世界各国の政府が大規模な金融緩和政策をやらざるを得なくなって、この4~6月で市場に流通しているお金がジャブジャブになっているわけです。

そのようなインフレ状況下で価値を毀損せず保有しやすいもの、移動させやすいものは何かと考えた時にビットコインは相応の評価を得ました。僕は、だからこそ100万円水準を維持しているという見方をしています。

ビットコインを「ポートフォリオの一環」として持つ

ビットコインは、裏付けとしての物がない資産ではあるのですが、逆に言えば、今年も大きな暴落を乗り越えて、ポスト・コロナを見据えなければならない現状でも100万円以上の価格を付けています。

相変わらず、ファンダメンタル的な裏付けはないんです。

でも、社会的認知として、「ビットコインが資産として一定の評価を得た」というのが今の状況と思って見ています。ゴールドのように実物があるわけではないけれど、資産ポートフォリオとして希薄化する通貨マーケットや乱高下する株式市場に対して、皆がやり取りできるデジタル上の資産としてビットコインが一つの存在感を確立したということです。

今後、個人の方が自分の資産ポートフォリオの配分の一環として、全額ではないにしても「数割はデジタル資産で持っておこう」という気運が高まることはあれど、資産価値が無くなるようなことはまず起こり得ないと考えています。パブリックブロックチェーン上でやりとりされる暗号資産、特にビットコインが存在感を発揮していて、世界的な認知は無くならないのではないかと。

厳密には、「デジタルゴールド」ではないんです。

通貨の準備の裏付けにもなっているゴールドとは違います。ただ資産ポートフォリオの一環、安全資産という見方では、今のゴールドに近いと消費者の方々が見なしているという点では「似ている」部分があるというのが正しいと思います。そういった中で、ビットコインのプレゼンスは今後ますます高まっていくでしょう。

ビットコイン一つに専念

コイネージは、暗号資産交換業者としては「何周か遅れての参入」になりますけれど、我々としては、スタートして行けるだけでとても喜ばしいことですし、ライバル企業になんとか食い下がっていきたいと。いよいよ始められる・・・と希望に満ち溢れています。

銘柄としては、ビットコイン一つだけを取り扱います。

ビットコインは、事実上暗号資産マーケットの中でも7~8割のドミナンスを占めています。

多くの暗号資産交換業者は、複数のアルトコインでサービス展開していますが、私どもはビットコインだけなんです。だからこそ、「ビットコインが如何にここまで注目されて来たか」、「なぜ今ビットコインに未来があるのか」というところを真剣に語るしかありません。

様々なビジネスが暗号資産業界に参入してきた際も、最も注目を集めていたのはやはりビットコインでした。その情熱の理由を原点に返って、思い切り伝えるしかない。

ですので、僕らは「ビットコイン一本で上等じゃないか」という線で攻めます。目指すは「プロフェッサー・ビットコイン」です。ビットコインだったらあの会社だと多くの人に認めてもらえるような。

その上で、マネーパートナーズ自体は、先ほど申し上げた「決済」の方を粘り強く追いかけて行きたい。

交換所としてのコイネージ、ビットコインの決済利用を目指すマネーパートナーズ。この二本立ての中で、まずは交換所としてのコイネージのお客様を獲得するというところを先行させながら進んでいきたい。

――日本人がビットコインを手軽に外国で使えるなど、海外を見据えた戦略やビジョンはありますか

複数の法定通貨に対応したプリペイドカードであるマネパカードは国内決済はもちろん、海外でも使えます。

マネーパートナーズに残高がある日本円は国内でも使えますし、海外でドルを使えば、かっちり10ドルが引き出されて終わりという分かりやすさがあります。マルチカレンシーと言う状況になっていかないといけない、通貨は円だけではないんだというポートフォリオ的な部分に、マネパカードは元々未来を見出そうとしていたところがありました。

世の中が「デジタル資産の時代」に変わってきているという流れの中で、ビットコインに繋げていきたいと思ったところです。

マネパカードを暗号資産のブリッジにする構想

日本円でもご利用いただけるので、マネーパートナーズとコイネージは連携していくことになると思います。

マネパカードにビットコインの残高を置いておいていただければ、マスターカードを使えるお店だったらどこでもビットコインで買い物や飲食ができるようになる世界を目指したい。もちろん海外にいても使えるわけですが。「ビットコインはどこでも使えないじゃないか」という状況を「どこでも使えるよ」という状況にしたいわけです。

実はマネパカードは、サブライセンスのカードを発行する権限を持っていまして、今まで大和ネクスト銀行さんやピーチアビエーションさんなど、様々なサブカードを発行させていただいています。

決済のブリッジが出来るマネーパートナーズということで、今までお引き合いがあったので、今後市場のプレゼンスが高まっていく中で、他の暗号資産交換業者さんがマネパカードをブリッジカードとして、それぞれの暗号通貨は日本のどこでも利用できるという状態を作り出したいというのがマネーパートナーズの戦略です。

――取引環境などの面でユーザーに選んでいただくような動きをされるということでしょうか

ネット取引という点では、私は前の会社も含め20年間最前線に立たせていただいて、接してきたお客様の数が投資家という目線で50万人を超えるような状況です。投資家や利用者が何を望んでいるのか、何を嬉しいと思うか、使いづらいと思うかは分かっているつもりです。

そうした目線で他社さんのサービスとかツールを見ると、まだまだ改善の余地が沢山あるなと思って見ています。

ノウハウもあり、立ち上げまで20億円かけてここまできていますが、それでもやはりスタート地点では「ないもの尽くし」です。マネーパートナーズにあってもこちらにないことが山ほどありますが、それも含めてベンチャーの楽しみだと思っていまして、そうした点がアップデートされていく中で、しっかりとした存在感を示していければと思っているところです。

――決済について、国内でのボトルネックとして、「少額決済の非課税」が実現しないと、なかなか普及に至らないのではないかという指摘もあります。ロビー活動などで政治家・国会に声を届けることが重要ではないか、というような。

そもそも、JCBAで「税制改正」を挙げてと陣頭に立って交渉していたのは私です。

昨年も、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)から税制改正の要望を出させていただいたところで「改正の可能性はある」と強く思っており、政治の側にもしっかりした改正の要望をお伝えし続けています。

このような活動の結果として、本年の7月31日付けで、JVCEAとJCBAの連名による「2021年度税制改正に関する要望書」の取りまとめが実現しました。

詳細は当該要望書に譲りますが、暗号資産現物に関しては暗号資産取引の利益への課税方法を20%の申告分離課税として、損失を翌年以降3年間暗号資産に係る所得金額から繰越控除ができることとすること、暗号資産取引にかかる利益年間20万円までの少額非課税制度を導入することを要望する内容です。暗号資産の決済における利用促進、市場の活性化のため、あるべき暗号資産税制の実現のために引き続き取り組みたいと思っているところです。

――本日はありがとうございました。ビットコインに対する熱い思いが伝わってきました。

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